2011 Fiscal Year Annual Research Report
現代のパフォーミング・アーツにおけるメディアの利用についての歴史的・理論的検討
Project/Area Number |
10J10029
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江口 正登 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | パフォーマンス研究 / 舞台芸術 / 演劇 / 現代演劇 / アメリカ演劇 / 環境演劇 / リチャード・シェクナー / 鈴木忠志 |
Research Abstract |
本年度は、昨年に引き続き20世紀後半のアメリカ合衆国における「パフォーマンス的転回」の在りようを歴史的に検討していくという作業を行った。とりわけ、その空間的な側面における主要な一契機としての「環境演劇」についての検討に集中的に取り組み、その主要な成果として、二本の学会発表を行った。 まず、日本演劇学会2011年度全国大会において、「上演空間の拡張--R・シェクナー「環境演劇」を中心に」という口頭発表を行った。近代的な劇場空間の外部での演劇実践についての理論化を行うという試みの中で提起されたシェクナーの「環境演劇」概念について、この形成過程を詳細に検証すると共に、パフォーマンス研究者シャノン・ジャクソンの「社会的作品」についての近年の議論などを参照しつつ、その今日的なアクチュアリティを検討した。 国際演劇学会(International Federation for Theatre Research)での口頭発表「Far from Tokyo : Tadashi Suzuki's Experiments in Toga」では、演出家・鈴木忠志の富山県利賀村での活動を検討し、そこに見られる個別的な空間への固執という特徴が、社会的・経済的のみならず美学的な理由にも基礎づけられたものであること、それがいかなる演劇思想に基づくものであるかを明らかにした。これは、アメリカではなく日本の作家を対象とするものであるが、上述の「環境演劇」的実践の具体的なケース・スタディとしての性格を持つものである。 以上、本年度は、「パフォーマンス的転回」の空間的な側面における枢要な一契機としての「環境演劇」について集中的に検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の力点に多少の変更があり、計画の見直しが求められた。また、掲載に至った雑誌論文がなかったという点において、当初の計画を数値的には達成することができなかったが、研究自体は順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度にも報告したように、パフォーミング・アーツにおけるメディアの利用のあり方に直接的に焦点をあてるのみならず、それが位置づけられるべきより広いコンテクストとしての「パフォーマンス的転回」の在りようを明らかにする、という作業の割合が、当初の計画よりもかなりの程度増えている。これに応じて、必要とされる具体的な作業内容の洗い直しを目下進めているところである。また今年度は、研究指導の委託制度を利用し、秋学期よりニューヨーク大学に客員研究生として滞在予定である。同大学をはじめとし、ニューヨークは、「パフォーマンス的転回」の最も主要な舞台の一つであり、人的なものも含め、資料面において極めて豊富な蓄積がある。これらを存分に活用しながら今後の研究を進めたい。
|
Research Products
(2 results)