2011 Fiscal Year Annual Research Report
「再始動」後のヨーロッパ統合-980年代半ば以降の雇用政策を巡る展開を中心に
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10J10053
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野田 拓也 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | EC / EU / ヨーロッパ統合 / ガヴァナンス / 構造基金 / 雇用政策 / 産業政策 / 地域政策 |
Research Abstract |
(1)2年度目にあたる平成23年度は、4月に発表した論文において着想を得た分析枠組を発展させる作業に傾注した。この論文は、80年代の構造基金形成過程において制度化された雇用政策・産業政策・地域政策の境界画定を歴史的に検討したものである。このような政策領域間の相互作用が統合に参加しイニシアティヴを採ろうとする諸アクターにいかなる影響を与え、またそれを通じてEU統合の制度発展がいかに左右されるのかを検討する分析枠組の構築を試みた。この作業を通じて、本研究の分析枠組を既存の欧州統合理論、政策発展の理論のなかに位置づけることができた。とりわけ、古典的な新機能主義の統合理論において統合を進展させる主要なメカニズムとして重要視されながら十分な注意が与えられてこなかった、機能的スピルオーヴァーに対して、政治的連合形成と制度的適応を軸とするオルタナティヴを提示する可能性を有している。ここで得た理論的なアイディアを、構造基金の形成過程を素材にしつつ、年度半ばに学内の研究会にて発表した。活発な質疑に恵まれ、本研究の理論上・実証上の含意を模索する上で極めて有意義であったと考えている。 (2)他方で、平成23年度の研究においては、ECの経済介入と規制政治との関係が課題として浮上した。(1)にて検討した配分政治の展開過程は、超国家的な規制の発展と軌を一にしており、規制と配分の政策手段の組み合わせと両者の関係をめぐる多様性をいかに説明するかが問題となる。これは構造基金や産業政策と競争政策の境界画定を問うと同時に、ECが「規制国家」とも呼ばれる発展を遂げた要因をめぐる議論につながる、重要な論点を提起している。そこで平成23年度の研究は、このヴァリエーションに対して本研究で発展させてきたアクター間の連合形成を重視する枠組が応えることができるか、模索する試みを含むことになった。同年度後半には、ECにおける経済規制の発展に関する一定の文献レヴューを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の歴史分析において十分に展開できなかった本研究の理論枠組を、既存の統合理論との関係のなかで発展させることができた。同時に、同時期進展した他の政策手段における趨勢への拡張を模索することで、本研究課題の最終成果執筆に向けた土台を形成することができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度最大の課題は、最終成果の執筆である。EC統合の「再始動」の前後における政策領域の画定過程や、規制と配分の政策発展に関する、これまで進めてきた考察をまとめる一方、その歴史的展開の実証分析に力を注ぎ、博士論文を執筆する。その過程では、一次資料を含む資料の収集と国内外の研究者との意見交換が一層推進されるべきであり、これらはとりわけ次年度前半の研究活動のなかで重要な位置を占めることになるだろう。
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Research Products
(2 results)