2010 Fiscal Year Annual Research Report
女性の就業、結婚、出産、育児に関する意志決定の研究
Project/Area Number |
10J10317
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
萩原 里紗 慶應義塾大学, 商学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | パネルデータ / 構造推定 / 女性の意志決定 / 就業 / 結婚 / 出産 / 育児 / 仕事と家庭の両立 |
Research Abstract |
当該年度において、1.子どもの費用と便益、および、2.妻の就業と出産のトレードオフに焦点を当てて研究を行った。 子どもの費用と便益に関しては以下の研究を行った。日本の出生率の低下に関して、本研究ではその真の要因が子どもの費用ではなく子どもの便益が小さいからであると考え、観察不可能な子どもの便益を構造パラメータとして得ることができる構造推定を行うことによって、子どもの費用と便益を比較した。推定の結果、出生率の低下は、子どもの費用(金銭的な費用)ではなく、子どもの便益が小さいことが原因で起こっていることがわかった。特に6歳未満の子供の便益は就業する女性で低く、小学校に上がらない小さい子どもがいる女性の子どもの便益を上げることが出生率の上昇において重要である。また、子どもの費用(機会費用)を下げるには両親との同居が効果的であることが確認されたため、保育所の整備など、保育サービスの拡充を進めることも重要である。 妻の就業と出産のトレードオフに関しては、夫の所得リスクと危険回避度が、出産を直接抑制しているのか、妻の就業を促して出産を間接的に抑制しているのかを検証した。分析の結果、出産は所得リスクと危険回避度が高い場合に直接的に減少するのではなく、それらの影響を受けて妻が働くことで間接的に減少することがわかった。このことは、女性にとって就業と出産がトレードオフである日本の状況と近年の経済危機が合わさることによって、出産の選択がより難しくなっていることを示唆している。このまま就業と出産の両立ができず、経済が停滞した状況が続けば、日本の合計特殊出生率さらに低下し、このことは将来の日本の労働力人口の減少につながり、やがては経済成長の減退につながることが予想されることから、企業におけるダイバーシティの浸透、ワークライフバランスの普及が必要不可欠である。
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