2011 Fiscal Year Annual Research Report
女性の就業、結婚、出産、育児に関する意思決定の研究
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10J10317
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
萩原 里紗 慶應義塾大学, 商学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 女性の労働供給 / 結婚 / 仕事と家庭の両立 / 晩婚化・未婚化 / 女性の社会進出 / 結婚願望 / サーチモデル / 同時方程式モデル |
Research Abstract |
本研究では、女性の就業・結婚・出産・育児に関する意志決定がどのようにして行われているのかを構造推定アプローチを用いて明らかにすることによって、仕事と家庭の両立が可能な社会を実現していくうえで有効な政策決定に寄与することを目的とする。構造推定アプローチは理論と実証を結ぶ分析方法であり、従来の誘導形による推定方法では分からなかった、要因が意志決定に影響を与えるメカニズムを明示することができるという利点がある。このため、先行研究では、長い間結論の出なかった女性の行動選択に関する議論を集約、整理し、総合的な新しい見解を得ることが期待される。 当該研究者は、女性を取り巻く様々な要因が女性の正規雇用による継続就業と結婚の意志決定に影響を与えるメカニズムを検証した。この研究では、労働市場における就職先企業のサーチと結婚市場における配偶者のサーチが相互依存の関係にあると考え、同時方程式モデルを用いて実証的に分析を行った。理論的には、女性の留保所得が企業からの提示所得より小さく、夫の所得より大きいのであれば、女性は働き、女性の留保所得が企業からの提示所得より大きく、夫の所得より小さいのであれば、女性は結婚すると考えられる。この仮説の検証に際し、結婚は金銭的な要因だけでは行われないことから、結婚願望をコントロールした上で分析を行った結果、女性の留保所得のほうが企業からの提示所得より大きく、夫の所得よりも小さい場合は結婚をし、企業からの提示所得のほうが女性の留保所得より大きい場合は正規雇用として働き続けることがわかった。また、本研究では、女性の労働供給と結婚のトレードオフ問題がいまだに存在していることも明らかにした。日本では女性がキャリアを積みやすいような環境づくりを目指しているが、それは主に出産に対する制度設計がメインであった。出産だけでなく、結婚との関連を考慮した制度設計、具体的にはキャリアを積みやすいように、仕事と家庭の両立支援策を行うことが求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、女性の就業・結婚・出産・育児に関する意志決定のメカニズムを明らかにすることで、仕事と家庭の両立が可能な社会を実現していくうえで有効な政策決定に寄与することを目的としている。その一環として、これまで別々に検証が行われていた労働市場における就職先企業のサーチモデルと、結婚市場における配偶者のサーチモデルを組み合わせて実証分析を行ったことで、今までの研究では指摘されていなかった事実を確認することができた。これは、女性の行動選択に関する議論を集約、整理し、総合的な新しい見解を得るのに貢献したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究課題の推進方策として、これまで構築を続けてきた、女性の就業、結婚、出産、育児に関する意思決定を動学的に分析するプログラムを活用して、数多くの論文を執筆していくことを計画している。このプログラムは汎用性が高く、様々な理論モデルに合わせて、女性の意志決定のメカニズムを動学的に分析することが可能である。また、構造推定において問題となっている計算量の膨大さに関しても、より効率的に計算を行えるプログラムの構築やモデルの設定の仕方を採用することで解決する。
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Research Products
(3 results)