2010 Fiscal Year Annual Research Report
MGL1による腸内共生細菌の認識を通した免疫・炎症応答の軽減機構の解明
Project/Area Number |
10J10365
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藏品 良祐 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Lectin / MGL1,MGL2 / 大腸炎 / Interleukin 10 / 腸内共生細菌 |
Research Abstract |
私はDextran Sulfate Sodium Salt(DSS)により大腸炎を誘導したマウスの腸管膜リンパ節から単離した腸内共生細菌の一つであるStreptococcusをヒツジ血液寒天培地にて培養し、培養した菌体を5Mグアニジン塩酸で処理することにより、MGL1結合成分を抽出する方法を確立した。この菌体および抽出物はVVA-B4、PHA-L4、PNAにも結合性を示し、これらの結合成分の分子量と同等であることから、MGL1結合成分はこれらのレクチンにも結合を有する可能性が高いことを明らかとした。 野生型マウスの腸管の固有層マクロファージとStreptococcusとの共培養により、抗炎症サイトカインであるInterleukin 10(IL-10)の遺伝子発現誘導が認められ、一方で、Mgl1遺伝子欠損マウスではその発現誘導が見られないことが報告されている。私はMGL1に対する抗体(LOM-8.7)を用いて野生型マウスのMGL1の機能を阻害した場合、腸内共生細菌によるIL-10の発現講導が起こらないことを証明した。このことは、この腸内共生細菌が固有層マクロファージのMGL1を介して作用した結果、IL-10の発現誘導を起こしているという事象を裏付けになる結果であり、大変意義のある成果を得た。この腸内共生細菌とCARD9遺伝子欠損マウスの固有層マクロファージとを共培養した結果、IL-10の発現誘導は認められず、腸内共生細菌とMGL1との相互作用によるIL-10の発現誘導におけるシグナル伝達経路にCARD9が関与している事が示唆された。 DSSの投与により誘導した大腸炎においてMgl1遺伝子欠損マウスは野生型マウスより重篤な炎症を示し、免疫応答の抑制に寄与していることが報告されてきた。私は、人のMGLに相当するMgl2遺伝子欠損マウスにおいてもDSSにより炎症を誘導して免疫応答への寄与について検討した。その結果、Mgl2遺伝子欠損マウスは、炎症の評価法であるDisease Activity Indexの値が野生型マウスに比べて有意に高値を示しており、腸管のクリプトの脱離がみられる等、重症な病態を呈していることが判明した。つまり、Mgl2遺伝子欠損マウスにおいても野生型マウスよりも重篤な炎症を起こすことが分かった。
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