Research Abstract |
引き続き,「テストの実施目的・役割に対する学習者の認識」であるテスト観に着目して研究を行った。まず,定期テストの勉強時に使用される学習方略と,定期テスト後の見直し行動を行う際に使用される学習方略の関係,及びこれらの方略使用とテスト観の関連について検討を行った。また,テスト観と方略使用の関係を媒介する要因として,テストを受けることに対して接近するか回避するかという2つの動機に着目した。高校生493名を対象に質問紙調査を実施し,解析を行った結果,テスト接近傾向の高い学習者ほど,適応的な学習方略を用いる傾向にあり,「テストは学習の改善に活用するためのものであり,また学習のペースメーカーとなる」というテスト観を有する学習者ほど,テスト接近傾向は高いことが示された。さらに,学習方略間の関連やテスト接近-回避傾向の影響を考慮しても,テスト観と学習方略には関連があることが示され,テスト観への介入の重要性が示唆された。 次に,教師のテスト運用方法と学習者のテスト観の関連について検討した。テスト運用方法については,テストの実施目的や評価基準を生徒に理解させる取り組みであるインフォームドアセスメントと,テスト内容に着目した。中学生・高校生1358名(全10校)を対象に質問紙調査を実施し,マルチレベル分析を行った。その結果,インフォームドアセスメントに関する取り組みを教師が行っていると認知する学習者や,テストで出題される問題の実用性が高いと認知している学習者ほど,肯定的なテスト観を持ち,教科能力を測っているとは思えない問題が出題されていると認知する学習者ほど,否定的なテスト観を持つ傾向にあることが示された。また,これらの関連に,学校間差や個人差はほとんどみられず,一般化可能性の高い知見であることが示唆された。 以上の研究は,テストと学習行動の関連を明らかにし,テスト運用方法について具体的な示唆を得た点で意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の1つとしていた,「教師の信念が学習者に与える影響」については研究を実施することができなかったものの,その他の研究は順調に実施された。また,データを取り終えた研究を全て論文化できたことは,当初の計画以上の進展であったといえる。以上のことから,総合的な達成度を「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
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