Research Abstract |
昨年度までに,テストの実施目的・役割に対する認識であるテスト観に着目し,学習者の持つテスト観によって学習者の学習動機や学習方略の使用傾向が異なることを示してきた。本年度では,教師のテスト運用方法によって学習者のテスト観がどのように異なるかをみることで,テストの効果的な利用法について検討を行った。テスト運用方法については,テストの実施目的や評価基準を生徒に理解させる取り組みであるインフォームドアセスメントと,テスト内容に着目した。中学生・高校生1358名(全10校)を対象に質問紙調査を実施し,マルチレベル分析を行った。その結果,インフォームドアセスメントに関する取り組みを教師が行っていると認知する学習者や,テストで出題される問題の実用性が高いと認知している学習者ほど,肯定的なテスト観を持ち,教科能力を測っているとは思えない問題が出題されていると認知する学習者ほど,否定的なテスト観を持つ傾向にあることが示された。 また,学習者のテスト観を変容させると同時に,学習改善を促す働きが期待されるテストとして,認知診断テスト(Cognitive Diagnostic Assessment)に着目した。認知診断テストとは,アトリビュート(attribute)と呼ばれる,ある教科や単元などの学習内容を理解するのに必要な認知技能・知識の習得度を測定するためのテストである。認知診断テストを利用し,達成すべき学習目標やそれらの達成度,学習改善すべき内容を明確にすることで,学習改善を促進できる可能性を示した。
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