2011 Fiscal Year Annual Research Report
遺跡における有効な電磁気探査法の開発―積雪でのモデル実験の併用と遺跡での適用―
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10J10565
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
泉 吉紀 富山大学, 理工学教育部, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 遺跡探査 / 地中レーダ / 積雪の構造 |
Research Abstract |
本年度は,考古学分野では国内の遺跡を対象に電磁気探査を行い,雪氷学分野では新たな測定対象を捉えるための実験及び測定方法の開発を進めた. まず,北海道上ノ国町に所在する夷王山墳墓群において電磁気探査を実施した.夷王山墳墓群では約650基の墳墓が確認されている.発掘調査から和人とアイヌの墓が見つかっているが,発掘調査は全体の15.4%ほどしか行われておらず,墳墓群の全体像の把握はできていない.そこで,電磁気探査によって墳墓の分布,さらに墳墓が和人墓かアイヌ墓かの判別を行うために調査を実施した.結果については,現在検討を進めている段階であるが,今後も夷王山墳墓群において追加の調査を行う予定であり,探査結果から墳墓の分布傾向を明らかにできると考えている. 次に,徳島県徳島市一宮町に所在する一宮城跡においても地中レーダ探査を行った.一宮城は戦時の山城(本丸)と平時の居館である里城(御殿居)からなり,徳島県内で最大の規模を誇る.御殿居は,本丸の北東約500mの平野部に位置し,同地の南西部を区画するように農業用水路が堀の一部として残っており,東西約230m,南北約140mの範囲が想定されている.今回,御殿居の区画を探ることを目的として地中レーダ探査を実施した.その結果,北西端にて深度2瓜程に堀跡と考えられる反応が得られた.探査結果から幅約5m,距離80mに渡って現存する用水路に向かう流路が推定された. また,東日本大震災以降,地震による土砂災害が多発している.豪雪地帯では,土砂が積雪を巻き込んで堆積しており,復旧工事の妨げとなっている.今回,土砂内に残存する雪の位置と量を探るため地中レーダ探査を行った.現地調査では土砂内に残存する雪と見られる反応が得られた.現地調査の結果を検証するため,雪と氷を埋設し,反射パターンの変化を探る実験を実施した.実験結果から土砂内に残存する雪の位置については高精度で検出が可能となった.今後,雪や水が混在する土壌の電磁気物性を研究することで土砂内に残存する雪の量を検証していきたい.これについてはH24年度に雪氷学会において発表を予定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,北海道(寒冷地)の遺跡を対象とした電磁気探査を実施しており,従来では発掘調査が主であった墳墓の分類を,電磁気探査の手法を用いて行った.新たな分類法として史跡の保護の観点からも望まれる方法といえる.研究発表においても日本文化財科学会で,ポスター賞を受賞した. また,土壌内の雪の研究では,土壌と雪氷という物性の異なるものを対象とするため,得られた結果を正確に判断することが困難になるが,検証実験の実施することで,信頼度の高い結果が得られ,今後の研究にも期待ができる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,遺跡や遺構の研究で有効な電磁気探査法を開発することを主要な目的としている.今後も遺跡・遺構を対象として電磁気探査を実施し,探査結果の解析で曖昧とされている対象の物性を実測することで,信頼できる解析結果を得る.発掘・トレンチと対比し,フィードバックして,有効な探査法の改良・開発を行う. また,雪氷を用いる遺構探査も独創的研究として計画し,電磁物性が均一で理想的な雪氷中に遺構の疑似領域を設けて調査する.成果は,遺跡の電磁気探査に活用できると共に,極東で永久凍土下に眠る遺跡研究の有力な手段となる.更に,凍結による遺跡遺構の破壊問題への対応での利用も考えられる.併行して,国内外の遺跡での探査電磁物性の新規手法による研究を行い,考古学・文化財科学に役立つ成果をあげる.
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Research Products
(3 results)