2010 Fiscal Year Annual Research Report
学習によるシナプス伝達の変化の解明―記憶に関与した細胞の変化を選択的に解析する―
Project/Area Number |
10J10639
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
豊田 雄 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 扁桃体基底外側核 / 恐怖条件づけ / Arc / シナプス伝達効率 / スパイン形態 / 記憶・学習 |
Research Abstract |
扁桃体は側頭葉内側部に位置する脳部位で、とりわけ扁桃体基底外側核(BLA)は恐怖条件づけの形成と恐怖の消失に関与する主要な部位である。近年、恐怖記憶の発現と恐怖の消失がBLA内の一部の神経細胞集団の活動によって担われることが明らかになりつつある。しかし、この神経細胞集団を構成する個々の細胞およびそのシナプス伝達の変化については明らかになっていない。そこで私は、恐怖の発現と消失に対応したシナプス伝達とその構造的基盤である形態について明らかにすることを研究の目的とした。活動した神経細胞を生きたまま可視化できるArc-dVenusトランスジェニックマウスに恐怖条件づけを行い、恐怖記憶の想起時に活動した神経細胞からパッチクランプ記録を行ったところ、恐怖記憶に対応した神経細胞の微小興奮性シナプス後電流(mEPSC)の頻度が増加し、ペアパルス比(PPR)が低下することが見出された。シナプスを多く含むと考えられる樹状突起上のスパイン形態については有意な差は認められなかった。この結果は、恐怖記憶に対応した神経細胞に入力するシナプス選択的に伝達物質の放出確率が増大した可能性を示す。また、同様にして消失記憶に対応した神経細胞についても解析を行ったところ、mEPSCの頻度が増加したが、PPRに有意な差は認められなかった。樹状突起上のスパイン形態において、サイズの小さなスパインにおいて密度が増加していることを見出した。この結果は、消失記憶に対応した神経細胞に入力するシナプス選択的に、シナプスの数自体が増加した可能性を示す。以上の結果は、個体動物の記憶・学習に対応した神経細胞のシナプス入力選択的に伝達効率が増強し、恐怖記憶と消失記憶は異なるメカニズムで貯蔵されることを示唆している。本研究は、学習とシナプス伝達効率の変化を結ぶ新たな知見であると考えられる。
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Research Products
(2 results)