2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J10659
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
市川 裕樹 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 光増感剤 / PDT |
Research Abstract |
光増感剤とは、光照射によって一重項酸素(1^O_2)等の活性酸素を生成し、周囲の環境に酸化ストレスを与える化合物である。ある種のがん患者に光増感剤を投与して腫瘍組織に充分集積させた後に、腫瘍組織限定的にレーザーを照射し、光増感反応によってがん細胞を壊死させて治療を行う光線力学療法(PDT)という治療法がある。PDTは単独では細胞毒性を持たない光増感剤と細胞に障害を与えないレーザーの2つを組み合わせることによって初めて細胞障害を起こすため、非常に病変選択性の高い治療が可能である。臨床では肺がん、胃がん、食道がん、子宮がんなどの早期がんに適応されており、高い寛解率や患者への負担の小ささから近年注目を集めている。 しかし、既存のPDT治療法はがん細胞に物質が集まりやすいというEPR効果による受動的な光増感剤の集積などを制御原理としているため、正常な細胞への光増感剤の分布は避けることができない。正常な組織に残存した光増感剤は太陽光などの光が当たることによって皮膚などの正常な組織にもダメージを与えてしまう。この副作用は光線過敏症と呼ばれ、現在のPDT治療の大きな問題となっている。そこで申請者は新たな機能性光増感剤を開発し、これまでの光線過敏症を克服した選択的ながん治療を目指す。
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