2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J10659
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
市川 裕樹 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 光増感剤 / がん / 光化学 / 光線力学療法 |
Research Abstract |
光増感剤とは光照射によって一重項酸素を生成し、取り込んだ細胞・組織へ酸化ストレスを与えることができる化合物であり、医療現場でも光線力学療法(PDT)の薬剤としてがん治療などに使用されている。本研究では、spiro環の開環・閉環を制御原理としたactivatable光増感剤を開発し、それとともに光照射を行うことで標的酵素を発現した細胞のみを選択的に細胞死に導く技術の開発を目的としている。以下に、本年度に行った研究について記す。 FluoresceinやRhodamineに代表されるxanthene系色素化合物は蛍光色素として広く知られているが、xanthene環の0原子をSe原子に置換したSe-xanthene色素は重原子効果により蛍光性を失い、高い効率で一重項酸素を生成する光増感剤となる。そこでこのSe-xanthene系光増感剤の一重項酸素生成能の制御を目指し、activatableな光増感剤の分子設計を行った。すなわち、酵素反応前は閉環構造をとりxantheneの共役鎖が分断されて可視光吸収を持たないことで一重項酸素を生成しないが、酵素反応によって分子構造が変化することで開環構造を示し、可視光の吸収とそれに伴う一重項酸素生成能が回復することを原理とした機能性増感剤の開発を行った。開発したactivatableな光増感剤を用いることで、細胞種選択的なcell ablationおよびPDTに成功した。具体的には、標的細胞特異的なcell ablationでは、レポーター酵素として汎用されるβ-galactosidaseを標的酵素として、ショウジョウバエ幼虫において部位特異的な細胞死を導くことに成功した。また、がん細胞特異的なPDTにおいては、標的酵素として、卵巣がんや肺がんで過剰発現しているγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)に着目し、GGT活性の高い細胞の選択的細胞死に成功した。本研究で確立された分子設計法は汎用性の高いものであり、今後さらに多くのactivatableな光増感剤を開発することで、医学・生命科学研究に大いに貢献すると期待している。
|