2011 Fiscal Year Annual Research Report
近代中国の貞節観の変容―1910年代~20年代の節婦烈女を中心に
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10J40051
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
村上 瑞代 (須藤 瑞代) 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | ジェンダー / 東洋史 / 女性史 / 中国 |
Research Abstract |
本研究は、近代中国における貞節観に着目し、1910年代~20年代の節婦烈女について、次の三点を中心に分析を行っている。(1)1910~20年代に「節婦烈女」として称賛された女性達のデータを整理し概要を明らかにする。(2)近代の「節婦烈女」と明清時代の「節婦烈女」との連続性と断絶を考察する。 (3)「節婦烈女」をめぐる賛否両論の言説を分析し、伝統的な貞節の概念と、西洋から輸入された女権や自由恋愛論などの新思想とのせめぎあいの様相を明らかにする。平成23年度は、特に(2)および(3)の言説分析を集中して行い、以下の点が明らかとなった。 第一に、清朝崩壊後、民国期に至っても節婦烈女は存在し、政府による節婦烈女の褒揚は1930年代まで確認できることが明らかとなった。 第二に、1920年代の女性論において、節婦烈女はほとんど関心の対象外となっていたことが浮かび上がった。当時の女性論を検討してみると、自由恋愛や離婚を含む性道徳に関する議論が大きなトピックとなっていた反面、節婦烈女に言及されることはほとんどなかった。女性論の対象は、未婚・もしくは結婚したばかりの若い妻らにあり、寡婦となった女性に関しては関心の対象外であった。 第三に、そのため、教育を受けた女性、もしくは女性に教育が必要だと考える女性たちにとって、寡婦となった場合の生き方の新たなモデルがなく、そのために旧来通りの節婦烈女となることが唯一の名誉ある選択肢であった。女子学校を卒業した女性が烈婦となった事例、節婦が女子学校を建設した事例も見られることから、近代的教育に理解のある女性もまた寡婦となった場合に節婦烈女としての道を選択しているケースは、注目すべきである。
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Research Products
(2 results)