2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J40128
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
白井 千晶 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 医療化 / リプロダクション / 出産 / 不妊 / 家族観 / 生殖技術 / 助産師 / 養子縁組・里親 |
Research Abstract |
(1)昭和期の女性のリプロダクションを担ってきた開業助産師(産婆・助産婦)の歴史的証言を得た。平成23年度は18人で、2年間計のべ55人に調査をおこなった。 (2)不妊当事者や生殖技術利用当事者17人(不妊経験者3人、卵子提供を依頼した人7人、生殖技術に関わる医師・コメディカル6人、卵子提供エージェント1人)のライフヒストリー・インタビューをおこなった。2年間計35人に調査をおこなった。近年のリプロダクションの医療化の一側面として、生殖ツーリズムに関連する人びとの意識や意思決定を調査した。第三者が関わる生殖技術(卵子提供、精子提供)を選択した人・検討した人は、「非血縁」を許容するゆえに実は養子縁組や里親と距離が近い側面が発見され、従来の「生殖技術=遺伝的親子の追求 VS 養子縁組や里親=遺伝的つながりを「超えて」親子になることを追求」という図式は当てはまらない側面が大きいという仮説をもつに至った。 (3)養子縁組、里親制度に関連して、養親、養子縁組に出す生みの親、養子縁組斡旋団体、16人に面接調査を実施した。また1年目に引き続き、児童相談所等行政の担当者、厚生労働省担当課にもヒアリングをおこなった。リプロダクションの医療化によって見えにくくなっているが、児童福祉、子どもの福利の観点から近年、再評価されている養子縁組制度、里親制度について、各々のエージェンシー(作用主体)のありようを確かめている。 (4)昨年実施した不妊経験者の量的調査の集計結果の公表をおこない、回答者に速報を送付してフィードバックした。平成22年12月実施、有効回収238票、報告書平成23年6月1日発行。結果は学会で報告し、『子ども資料年鑑』にも収録された。また、過去におこなったインタビュー調査および考察を『不妊を語る-19人のライフストーリー』として刊行した(海鳴社、2012年)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究に実際に取り組んでみて、「研究の目的」として当初予定していなかった様々な課題・新たな研究対象を発見することができ、研究対象を拡大している。一方で、女性のリプロダクションに関するコーホート別ライフヒストリー調査は実査に至るまでの計画が遅れており、取りかかれずにいる。そのため、総合評価として(2)「概ね順調」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
出産の歴史的変動の担い手でもあった元開業助産婦のインタビューを進める中で、年長コーホートほど医療化前の社会を経験しているとは限らず、環境要因が当初の予想より大きいことが確かめられた。農業環境が厳しい土地(山間部で稲作ができない土地)、僻地(とくに雪深い等、交通が遮断される土地)の昭和初期の経験に、リプロダクションの医療化過程を読み解く鍵があることがつかめてきたので、インタビュー対象者の計画見直しを図りたい。
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Research Products
(15 results)