2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J40159
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
横内 由紀恵 (森 由紀恵) 日本女子大学, 文学部, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 日本仏教史 / 中世史 |
Research Abstract |
本研究は、政治と宗教の思想が絡み合いながら具象化する日本中世成立期(11~12世紀)の王家の御産・御悩の御祈の特色と変遷を明らかにすることで、中世成立期の宗教の政治的機能の特色と変遷を解明することを目的とする。本研究課題の2年目にあたる平成23年度は、1年目の史料調査・データベースの作成作業を継続して行いつつ(下記1・2)、その過程での考察を研究発表・論文執筆の形で発表した(下記3)。 1.御産・御悩の御祈に関する史料調査・蒐集:(1)『覚禅鈔』諸本の調査・蒐集 東京大学史料編纂所 共同利用・共同研究拠点 一般共同研究「『覚禅鈔』諸本の調査研究」(以下東大共同研究)に参加し、活字化されていない『覚禅鈔』の古写本である千光寺本の調査に参加し、御産・御悩の御祈に関する新史料の調査・蒐集を行った。(2)日記史料の調査・蒐集 御産・御悩の御祈のうち、万事に通じる第一の御祈とされる千僧御読経に着目し、これに関する日記史料の調査・蒐集を行った。 2.御産・御悩の御祈に関するデータベースの入力作業:中世成立期真言密教の百科事典的書物と評される『覚禅鈔』は、仏教史だけでなく政治史・外交史など当該期の多彩な研究分野から注目されている史料である。本年度は『覚禅鈔』の年号・書名索引の入力作業を完成させ、本研究課題の基礎的データを蒐集した。また関係諸分野に広く貢献する『覚禅鈔』年号・書名索引の公表にむけて校正作業にも着手した。 3.研究成果の発表:1(1)『覚禅鈔』諸本の調査で得られた結果を東大共同研究の研究会にて口頭発表し、1(2)の結果を論文としてまとめ、奈良女子大学古代学学術研究センターの雑誌『古代学』に投稿し採用された。また、これらの史料調査・蒐集の中で、御産・御悩の御祈の一つの転機は12世紀後半にあることが明らかになり、当該期に成立した平氏政権による福原遷都を政治・宗教政策の一環としてとらえなおし口頭発表するなど、御産・御悩の御祈の研究を契機に中世成立期の政治と宗教の関係性を多面的にとらえる研究成果を導き出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全130巻に及ぶ入力作業に膨大な労力を要する『覚禅鈔』の書名・年号索引の入力作業を終了させ、本研究課題達成のための基礎的データの整理が終了しているため。 また、査読付論文を執筆し、本研究課題の基本的方向性を明らかにすることができ、本研究課題の目的達成のための研究計画が着実にすすめられているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度までに調査・蒐集した史料をもとに、本研究課題の考察を深め発表することをめざす。 本研究課題の基礎データとなる『覚禅鈔』の書名・年号索引は1200頁に及ぶことが明らかになった。このため、今年度は書名・年号の全件データベースの公開ではなく、真言密教僧の覚禅が主要参考文献とした書のうち、他宗派との関係性が明確になるデータ(天台僧安然著『諸阿閣梨真言密教部類惣録』・天台僧静念著『行林抄』など)などの整理及び考察結果の発表をめざし、御産・御悩の御祈を宗教界の構図全体と関係させながら考察する。 また、御産・御悩の御祈が大きく変化した事が明らかになった後白河院政期の政治と宗教の関係性についての考察を深めるため、当該期の帝都観と宗教の関係性について考察し、発表する予定である。
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Research Products
(3 results)