2010 Fiscal Year Annual Research Report
人身取引と「社会福祉」-国際社会福祉の確立を目指して
Project/Area Number |
10J40204
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
佐々木 綾子 上智大学, 総合人間科学部, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 人身取引 / 国際社会福祉 / 労働搾取 / 性的搾取 / 社会問題 |
Research Abstract |
本研究は、従来の「社会福祉」枠組みでは扱い難かった国際的で領域横断的な問題とその当事者支援のための制度、理論、技術体系を確立することを長期目標とし、日本における人身取引問題の認知、理解から現在の対応に至るまでの過程の分析から「社会福祉」と人身取引問題に関する現状を成り立たせている背景を明らかにし、今後の対応の可能性を探ることを研究目的としている。 本年度の研究は、日本において「人身売買」が歴史的にどのように公的対応を得るようになったのか、なぜ性産業以外における人身売買や男性・男児の人身売買は問題として取上げられてこなかったのか(取上げられなくなったのか)という点について、1950年代から80年代の資料をもとに考察した。また、社会福祉における人身取引問題の位置付けを再考するため、人身売買問題がどのように「社会福祉の対象」となり、対応されてきたのかに関する考察を行い、児童福祉や女性福祉、国際福祉というような従来の捉え方のみでなく、犯罪被害者福祉、地域福祉といった領域においても今後当該問題を位置付け対応していくべきであることを明らかにした。さらに、1990年代後半から2000年初頭の国会会議録、関係委員会議事録等を題材として、国際社会での議論や国際条約の締結に伴い、日本において人身取引問題がどのようにして政策課題となり議論されたのかを明らかにし、今後、男性や日本人の性的搾取目的の人身取引や性別に拘らない労働搾取目的の人身取引やその他の形態の人身取引にも適切に対応するために、臓器売買、国際結婚、国際養子縁組等とも関連づけた議論が必要であることを具体的に提言した。 一方、本研究の基盤となっている博士課程にて実施した研究の成果の再検討や、日本の社会福祉の歴史的展開の概要と人身取引問題を含むグローバルな問題に対する課題等についての英語論文執筆も行った。
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Research Products
(3 results)