2011 Fiscal Year Annual Research Report
人身取引と「社会福祉」―国際社会福祉の確立を目指して
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10J40204
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
佐々木 綾子 上智大学, 総合人間科学部, 特別研究員RPD
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Keywords | 人身取引 / 現代奴隷制 / 国際社会福祉 / 不法就労 / 日本の恥 |
Research Abstract |
本研究は、従来の「社会福祉」枠組みでは扱い難かった国際的で領域横断的な問題とその当事者支援のための制度、理論、技術体系を確立することを長期目標とし、日本における人身取引問題の認知、理解から現在の対応に至るまでの過程の分析から「社会福祉」と人身取引問題に関する現状を成り立たせている背景を明らかにし、今後の対応の可能性を探ることを研究目的としている。 本年度の研究は、昨年度に引き続き、国会会議録、関係委員会議事録、支援団体発行のニュースレターや支援記録誌、新聞記事、支援者へのインタビュー調査等を題材として、1970年代から2004年に至るまでに「人身売買」がどのように「問題」として成立し、政策課題として議論されるようになったのかを明らかにした。一方で、被害者保護を中心とした政策がなかなか進展しない背景には、現象に対する共通認識の欠如、政策課題としての定義獲得の失敗、「不法就労」問題からの不分離と出入国管理政策への大きな依存、「被害者パラダイム」の不完全な適用があり、それが政策的な位置付けの曖昧さや実行体制にみる困難にも影響されて積極的政策となり得ていないことが明らかとなった。 また、何らかの公的対応が必要であるという議論を支えるレトリックとして、「日本の恥」「国辱」等が使用されている可能性がみえてきたため、日本文化論等の領域における議論にも広く目配りをし、さらに分析を深める必要があることが分かった。 一方、本研究の基盤となっている博士課程にて実施した研究の成果を再検討し、博士課程で扱った2008年以降の米国の状況についても調査を開始した。なお、これまでの研究成果(日米比較を含む)はGlobalization/Book2(ISBN980-953-307-439-4)に英語論文(1章分)として投稿しており、現在審査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析の結果、当初の予測とはやや異なる方向での成果が得られたため、今後の研究計画に関して若干の軌道修正を検討する必要はあるが、研究自体はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、「人身取引」に関する日本の国会議事録や報告書等の分析を行うとともに、人身取引と密接に繋がりのある「不法就労」「売春」「子ども買春」等に関し、国会、関係委員会、及び民間活動のそれぞれのレベルにおける議論の進められ方を、国連、他国との関係性を含めて詳細に分析する必要がある。
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Research Products
(3 results)