2010 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア仏教美術における図像と儀礼空間―千手観音と薬師如来を中心として―
Project/Area Number |
10J40214
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
濱田 瑞美 昭和女子大学, 生活機構研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 図像研究 / 仏教儀礼 / 千手観音 / 薬師如来 / 石窟美術 |
Research Abstract |
本研究の目的は、東アジアにおける仏教図像を、儀礼空間のなかで解き明かしていくことにある。本年度は、日本と中国の千手観音および石窟美術に関する論考(1~3)を発表するとともに、中国敦煌地域の薬師如来図像の実地調査(4)を行った。 1.論文「千手観音眷属の功徳天と婆薮仙をめぐって」 日本平安以降の千手観音図によくみられる千手観音・功徳天・婆薮仙の三尊構成の理由について、中国の敦煌や四川地域の千手観音変の眷属図像との比較研究や関連経軌との照合により明らかにした。 2.口頭発表「莫高窟吐蕃時期的千手千眼観音変--以眷属図像表現為中心」 吐蕃支配(中唐)時期の敦煌の千手観音変の眷属図像を、同時期の四川地域ならびに日本の作例と比較したところ、敦煌では主に金剛界曼茶羅を構成する諸尊であるとの特徴が認められた。このことから、盛唐末以降の敦煌石窟の図像と儀礼における金剛界曼茶羅の影響を示唆。 3.口頭発表「仏影窟について」、論文「仏影窟攷-中国における石窟開鑿の意味をめぐって-」投稿。 図像と仏教儀礼とが密接に関わり合う石窟というものが、特に中国において盛んに開鑿されたことについて、北西インドに実際に在った「仏影」図像の果たした役割を論じた。 以上の論考は図像と儀礼との関係性に加え、東アジア全体を視野に入れた考察によって得た成果であり、本研究の研究手法の有用性を具体的に示すものといえる。 4.実地調査は、敦煌莫高窟の第148・166・171・180・159・200・222・231・236・237・359・360・107・156・167・196・108・288・76窟の盛唐から宋代までの19ヶ窟に及び、薬師如来図像データを集積した。 その他、千手観音の四十手に関する研究として、日本の清水寺式千手観音の図像を調査中。現在中国の作例との比較や、清水寺別当の定深による千手観音四十手に関する著作等との照合を進めている。
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