1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11164268
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岩田 孝 早稲田大学, 文学部, 教授 (80176552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桂 紹隆 広島大学, 文学部, 教授 (50097903)
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Keywords | pararthanumana / svadrstartha / prakasana / paramanu / samudaya |
Research Abstract |
法称(七世紀)の推論説を分析する為の第一段階として、仏教論理学において他者の為の推論そのものがどのように定義されているのかを考察した。法称の主著『知識論決択』の第三章(他者の為の推論)によると、他者の為の推論とは「(立論者)自身によって(妥当性があると)認識された対象(論証因)を(他者に対して)顕示する(言葉)である」と定義される。今年度はこの定義の部分を解読した。この定義の中のそれぞれの語句には、仏教内外の他者説への批判も含まれている。例えば、顕示されるものが論証因であるとの規定には、ニヤーヤ学派などが論証式の構成員の中に主張命題などを含めることへの批判が意図されている。つまり、主張命題などは、論証に不可欠な要素ではないので、推論において顕示される対象ではない、という批判が意図されている。本文の解読に際しては、こうした批判内容を分析し、法称説と他者説との相違を明確にした。同書の梵文原典は散逸し、西蔵訳のみが現存している。西蔵訳文の意味の不明瞭な場合には、仏教やジャイナ教などの論書にみられる梵文のパラレルを参照して訳出した。以上の文献学的解読のドイツ語訳を、ウイーン大学の研究雑誌(Wiener Zeitschrift)に発表した。なお、これと平行して、同書の和訳研究をも行い、文献学的な訳では十分説明のできなかった部分に対して詳細な訳註を加えた。 法称の論理学及び認識論は、後期の大乗仏教の教理を記述する際に応用されている。後期大乗仏教の教理形成に及ぼす具体的な影響を調べる目的で、十一世紀に活躍した密教の学匠、サハジャヴァジュラによる仏教の教理の網要書『定説集成』の一部を翻訳し、思想史的な背景を踏まえながら解釈を行った。
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Research Products
(1 results)