2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11164268
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岩田 孝 早稲田大学, 文学部, 教授 (80176552)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桂 紹隆 広島大学, 文学部, 教授 (50097903)
|
Keywords | hetucakra / samdeha / drstanta / anvaya / vyatireka / pramanya / sarvajna |
Research Abstract |
法称(七世紀中葉)は、独自な論理系を導入して、陳那(六世紀前半)の論理学を説明しつつ、自らの論理系と、陳那のそれとの無矛盾性を多くの箇所で示している。本研究では、法称の論理系が陳那の独創である九句因説と矛盾しないことを論じた『知識論決択』の箇所を分析した。その結果、陳那には見られない法称の視点が浮き彫りになった。それは、推論の成立の主要な条件である論証因と所証との論理的関係を、陳那が「確定される」ものと見なしたのに対して、法称は確定できない場合も有るとし、「疑い」の視点を導入して論理的関係を再分類したという点である。「疑い」の概念の導入により、他者が日常的に認識できない不確定な事柄を証明する場合(例えば常住不変なる実我などの存在を証明しようとする場合に)これを批判することが可能になった。 印度の論理学は実例に依存する為に帰納的であると言われている。実例に基づく為に生じる諸矛盾を回避する方法を検討することは、印度論理学の限界を示すという意味で重要である。本研究では、陳那の論理学での喩例の役割を分析した。更に、法称の『知識論決択』での疑似論証因の論述を調べ、実例に依らずに、論証因の成否を検討するという見方の萌芽が法称説に存することを指摘した。 上記の推論説の文献学的研究は、仏教論理学の基礎論の研究である。以下の研究は、その応用部分に相当する。ものごとの認識を成立させる根拠を定め、その根拠に基づいて、何が妥当なものとして残るかをラディカルに追求した法称は、世尊自身についても、何ゆえに人々にとって信頼される拠り所(公準、量)になるのかを問題にし、これの証明を試みた。本研究では、この証明に関するプラジュニャーカラグプタ(八世紀後半)の解釈を分析し、世尊の量性の証明が、世俗的上での証明と、勝義上での証明に分類されることなどの特徴を指摘した。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 岩田孝: "『知識論決択』(Pramanaviniscaya)第三章(他者の為の推論章)和訳研究ad v.3-他者の為の推論の定義のarthaについて(5)-"東洋の思想と宗教. 17. 1-17 (2000)
-
[Publications] 岩田孝: "『知識論決択』(Pramanaviniscaya)第三章(他者の為の推論章)和訳研究ad vv.4-5-他者の為の推論の定義のprakasanaについて(6)-"戸崎宏正博士古稀記念論文集「インドの文化と論理」. 267-288 (2000)
-
[Publications] 岩田孝: "世尊は如何にして公準(量)となったのか"駒沢短期大学仏教論集. 6. 1-38 (2000)
-
[Publications] 岩田孝: "『定説集成(sthitisamuocaya)和訳研究-無形相知識論瑜伽行派の定説(2)-"早稲田大学大学院文学研究科紀要. 45,1. 13-26 (2000)
-
[Publications] 桂紹隆: "Dignaga on trairupya Reconsidered : A Reply to Prof.Oetoke"戸崎宏正博士古稀記念論文集「インドの文化と論理」. 241-266 (2000)
-
[Publications] 桂紹隆: "Indian Tradition of Debate"Proceedings of the 1st Tokyo Conference on Argumentation. 1-12 (2000)