1999 Fiscal Year Annual Research Report
ハイブリッド配糖体を機能素子とする分子シンクロシステムの光線力学療法への新展開
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11167253
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
矢野 重信 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 教授 (60011186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
覚知 豊次 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助教授 (80113538)
三方 裕司 奈良女子大学, 理学部, 助手 (10252826)
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Keywords | 光線力学的療法 / ポルフィリン / クロリン / 光毒性 |
Research Abstract |
1.最近クリーンながんの治療法として光線力学療法(Photodynamic Therapy, PDT)が注目されている。このPDTに用いる光増感剤としてポルフィリン誘導体が使用されている。本研究では、テトラフェニルポルフィリン(TPP、tetraphenylporpyrin)を骨格とした生体適合性に優れた糖分子を有する水溶性ポルフィリン類・クロリン類の合成、またそれらの化合物の培養がん細胞に対する光毒性評価を行った。 2.今回合成したポルフィリン誘導体は、TPPのメソ位のフェニル基のメタ位あるいはパラ位に糖分子をグリコシド結合した一連の化合物で、糖の水酸基の保護の有無や、中心Zn金属の有無などを考慮し、4系統32種類の糖結合ポルフィリンならびに4系統32種類の糖連結クロリンの計64種類である。連結する糖分子として、6単糖(D-グルコース・D-ガラクトース)・5単糖(D-アラビノース・D-キシロース)の4種類を選択した。また、保護体のポルフィリンを還元することにより、保護体のクロリンを調製し、それらを脱保護することにより、糖連結水溶性クロリンを得た。クロリンは、UV-VISスペクトルにおいて長波長領域(650nm)に大きな吸光係数のピークを持っており、組織透過性の向上が期待される。 3.ポルフィリン類、クロリン類の培養がん細胞(HeLa)に対する光毒性評価を行った。P-置換ポルフィリン誘導体では糖の水酸基を保護した化合物が、またクロリン誘導体では糖水酸基を脱保護した水溶性化合物で飛躍的に活性が向上することがわかった。P-置換亜鉛含有化合物は、ほとんど光毒性を示さなかった。M-置換亜鉛含有水溶性クロリン誘導体もfree-base体の同じく飛躍的に活性が向上することがわかった。特にm-置換亜鉛含誘導体でもほぼ同等な効果が見られた。このことは亜鉛含有化合物の合成の容易さや、糖質の違いが光毒性の効果に大きく反映している。本研究の知見は、糖質による生体標的分子の設計の可能性を示す興味深い知見である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] S. Yano: "General Synthesis of Useful Chelating Reagents having a Sugar Unit, 1,3-Diamino-2-propyl β-D-Glucopyranoside and 1,3-Diamino-2-propyl α-D-Manno pyranoside"Chem. Lett.. 255-256 (1999)
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[Publications] S. Yano: "First synthesis and characterization of zinc(II) complexes containing N-glycosides derived from ethylenediamine and D-glucosamine"J. Chem. Soc. DALTON Trans.. 1851-1855 (1999)
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[Publications] M. Kato: "Luminescence Properties and Crystal Structures of Dicyano(diimine)platinum(II) Complexes Controlled by Pt … Pt and ππ Interactions"Inorg. Chem.. 38. 1638-1641 (1999)
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[Publications] H. Takagi: "Feasible attachment of a dinuclear ruthenium complex to gold electrode surfaces, -A screening method to find functional electrodes"Electrochemistry. 67. 1192-1193 (1999)
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[Publications] T. Tanase: "Novel MnIIMnIIIMnII Trinuclear Complexes with Carbohydrates Bridged Derived from Seven-Coordinate Mn(II) Complexes with N-Glycoside"Inorg. Chem.. (印刷中).
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[Publications] T. Tanase: "Substrate-dependent Chemoselective Aldose-Aldose and Aldose-Ketose Isomerizations of Carbohydrates Promoted by Combinations of Calcium Ion and Monoamine"Carbohydr. Res. (印刷中).