1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11301001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上倉 庸敬 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90115824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 文雄 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90201293)
森谷 宇一 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (70033181)
神林 恒道 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80089862)
藤田 治彦 大阪大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (00173435)
奥平 俊六 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30167324)
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Keywords | 芸術概念 / 近代日本 / 近代ヨーロッパ / インターカルチュアリズム / コロニアリズム / モダン / ポストモダン / 現代キリスト教思想 |
Research Abstract |
本年度は研究計画の第1年度であり、当初の研究方法の計画にもとづき、以下4点での成果をめざした。1)各研究グループの実践的な組織化と運営。2)各グループにおける来年度上半期までの目標設定。3)各グループの知見を共有するシステムの確立。4)グループによる研究成果の総括と、それをグループにさしもどす方法の模索。1)、2)はきわめて順調に進捗し、3)は予定した以上のアルバイトが必要であると判明した。4)のためには、グループ間の成果の溝をおぎなう在外資料の蒐集と外国研究者との知見交換が、すでに初年度から不可欠であった。また他の広範な研究グループとの共同討議も望ましく、たとえば国際シンポジウム「デザイン史フォーラム」の場を借りて研究例会のひとつとした。 こうして得られた新たな知見の主たるものを挙げれば、1)日本の講壇美学は森林太郎の移入した西欧19世紀流行の美学に対抗する形で生まれ、その結果はなはだしく思弁にかたむいて、芸術活動の現実状況をなおざりにするものになったこと、2)小山内薫が育成した日本の近代演劇は、俳優の身体をとおして人間を理解するという西欧演劇の伝統を無視し、その結果、インドなど他の東洋文化圏の演劇とちがって、西洋と東洋のあいだに生じる文化の相互浸透性を、いまにいたるまで持ち得ていないこと、3)日本の「工芸」概念は明治期の日本を背景に独自の経緯をへて明治20年前後に成立、西欧のdesignに対応していないため、まったく新しい視点から日本工芸史をくみたてねばならないこと、4)ヨーロッパにおける「芸術」概念の根底には、通常いわれるごときギリシャ文化の影響以上に、「キリスト受肉論」があり、内在する二元論的な矛盾を一元的に統括してきたキリスト教思想の危機が西欧現代芸術にあらわれていること、5)翻って、日本など非・西欧文化圏の「芸術」概念には、西欧ふうの歴史性をはらんだ理論がないこと、などである。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 藤田治彦: "「第二の自然」"『武蔵野美術』. 112号. 30-35 (1999)
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[Publications] 神林恒道: "批評にとって美学は可能か"芸術フォーラム21. 2号(発行予定). (2000)
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[Publications] 藤田治彦: "「明治五年刊『西洋家作雛形』の建築用語」"『待兼山論叢』. 33号. 1-24 (1999)
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[Publications] 廣兼順子: "形象・記述・言語"芸術フォーラム21. 2号(発行予定). (2000)
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[Publications] 上倉庸敬: "文学は人生と相渉るだろうか-古典詩学から現代の文学理論へ-"『芸術学を学ぶ人のために』(太田喬夫編・世界思想社刊)所収. (1999)
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[Publications] 上倉庸敬: "現代の文学理論"『芸術理論の現在-モダニズムから-』(藤枝晃雄・谷川渥編・東信堂刊)所収. (1999)
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[Publications] 神林恒道ほか編: "『芸術における近代-美的コンセンサスは得られるか-』"ミネルヴァ書房刊. 349 (1999)
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[Publications] 藤田治彦: "『現代デザイン論』"昭和堂. 157 (1999)