2001 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒分光法を用いたクラスター内溶媒和ダイナミックスの研究
Project/Area Number |
11304042
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
富宅 喜代一 神戸大学, 理学部, 教授 (00111766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 真治 神戸大学, 自然科学研究科, 博士後期課程・日本学術振興会特別研究員
野々瀬 真司 神戸大学, 自然科学研究科, 助教授 (70212131)
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Keywords | アルカリ金属原子 / アルカリ土類金属原子イオン / 水和クラスター / アンモニアクラスター / 溶媒和過程 / レーザー光電子分光法 / 鉄-ポルフィリン / 電気スプレー型質量分析器 |
Research Abstract |
1.アルカリ土類金属イオンの溶媒和クラスターは、溶液中での金属イオンの酸化還元反応のダイナミックスを分子レベルで解明する上で、格好のモデルとなる。本研究では、Mg^+イオンの酸化過程の溶媒分子数依存性を調べるために、Mg^+(NH_3)_nの光解離スペクトルと解離過程の実験的検討を行った。また非経験的分子軌道法により、クラスターの幾何構造と電子構造の計算を行った。1:1錯体の光解離過程では、溶媒分子への電子移動と水素原子の脱離を伴ったMg^+イオンの酸化反応を見出した。サイズの大きなクラスターでは、溶媒分子の蒸発過程だけが起こり、反応が抑制されることが分かった。また、サイズの増加にともなうスペクトルの大きな低エネルギーシフトが観測され、クラスター内でMg^+イオンがMg^<2+>に自発的にイオン化することが明らかになった。また、クラスター内でのMg原子の酸化反応のダイナミックスを検討するために、Mg(NH_3)_nのフェムト秒レーザーを用いた光イオン化過程を調べた。生成イオンの詳細な解析およびポンプープローブ実験により、中性のクラスターの励起状態の反応性と気相中での二価イオンの安定性について新しい知見を得た。 2.金属イオンの溶媒和過程の微視的理解を深めるために、p型の価電子をもつAl原子に研究を拡張し、Al^-(H_2O)_nイオンの水和過程を光電子分光法と非経験的分子軌道法を用いて調べた。光電子スペクトルの解析により、水分子はAl^-負イオンに水素原子側から配位し、n=3以上では水素結合で環型に集合した水クラスターにAl^-が付着した構造をとることが明らかになった。また溶媒分子の配向緩和過程を実時間で調べるため、ドイツ、マックスボルン研究所のI.V.Hertel教授らのグループと共同で、Na(H_2O)_nクラスターのfs秒レーザーを用いた二段光電子分光実験を進めている。 3.前年度に開発した電気スプレーイオン源を備えた光解離分光装置を用いて、ヘミン(鉄-ポルフィリン)-ジメチルスルフォキシドクラスターの光解離過程を検討した。光解離および熱解離過程の生成物の解析を行うことにより、溶媒分子の蒸発過程と競争して起こるヘミンのβ-解裂反応の機構を明らかにし活性化エネルギーを求めた。この解裂反応のダイナミックスを調べるため、フェムト秒レーザーを用いたポンプープローブ実験による解裂速度の測定を進めている。
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[Publications] 高須良三: "Photodissociation Spectroscopy of Li-H_2O and Li-D_2O Complexes"J. Phys. Chem.. 105. 6602-6608 (2001)
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[Publications] 吉田 真治: "Photodissociation of Mg^+(NH_3)Ion"Chem. Phys. Lett.. 347. 93-100 (2001)
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[Publications] 野々瀬真司: "Electronic Spectra and Structures of Solvated NH_4 Radicals, NH_4(NH_3)_n(n=1-8)"J. Phys. Chem.. (印刷中).
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[Publications] 富宅喜代一: "Solvation of sodium atom and aggregates in ammonia clusters"Advances in metal and semiconductor clusters. 5. 1-37 (2001)
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[Publications] 大島康裕: "Electron Transfer in Chemistry"Wiley-VCH. 39 (2001)