1999 Fiscal Year Annual Research Report
急性砒素中毒患者、特に胎児・新生児への砒素曝露による生体影響に関する研究
Project/Area Number |
11470100
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
山内 博 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教授 (90081661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斉藤 秀 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (90308445)
荒井 二三夫 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (90103481)
吉田 勝美 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80158435)
中井 泉 岩手県立大学, 短期大学部, 助教授 (90155648)
網中 雅仁 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (30231997)
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Keywords | 急性砒素中毒 / 胎児 / 新生児 / 脳障害 / DNA損傷 / アポトーシス / メチル化 / 行動学 |
Research Abstract |
本研究は、胎児期に急性砒素曝露が存在した場合における胎児の脳障害について、組織病理学的検索および動物行動学の手法を用いて検討を試みた。 実験動物は日本チャールズ・リバー社製の妊娠ラット(SPF/VAF rat(Crj:Wister)、生後9週の初産)を1群3匹として使用した。妊娠17日目に三酸化砒素をLD_<50>の1/4量を胃ゾンデー回経口投与した。投与後12、24、48時間目に動物は麻酔下で採血後、PBS溶液で潅流し、その後、母体と胎児から臓器、組織を採取した。組織病理学的検索は、凍結切片及びパラフィン切片を用い、apoptosisはTUNE法(Enzo社製)で評価し、necrosisはHE染色法にて評価した。自発行動は生後4週目にオープンフィールドをアニメックスによるテストを行った。 1)母体の脳はどの観察点においてもapoptosisとnecrosisは共に認めなかった。胎仔の脳にnecrosisは認めなかったが、しかし、apoptosisは認められ、12時間目の出現が最も高くその後は減少する顕著な結果が得られた。胎児期の急性無機砒素曝露において、胎仔の脳は母体に比較して特異的に砒素が取り込まれる機序が存在し、さらに、砒素化合物による脳組織への障害としてapoptosisが顕著に観察された。 2)オープンフィールドテストの結果は対照群に比較して、雄の曝露群の歩行量は増加したが、雌に変化はなかった。潜伏時間は雌雄ともに短く、そして、立ち上がり回数は雌雄ともに増加傾向にあるが有意差は示されなかった。アニメックステストの結果は、昼の休眠期における活動量は2群間に差は示されなかった。一方、夜間の活動期は対照群に比較して暴露群の活動量は雌雄共に有意な減少が認められた。胎児期の一回急性砒素暴露によって、自発行動への顕著な影響が認められ、すなわち、中枢神経系への障害を与えることが明らかとされた。
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