1999 Fiscal Year Annual Research Report
根源的「からだ」イメージの探究,そこからの倫理的考察
Project/Area Number |
11610037
|
Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
竹山 重光 和歌山県立医科大学, 教養部, 助教授 (60254520)
|
Keywords | からだ / 医学化 / 画像技術 / 身体所有 |
Research Abstract |
本年度は「からだ」イメージの「医学化」に着目して研究を進めた。 研究の基本的態度として、抽象的一般的な次元に一気に跳び上がることを避け、具体的な次元を踏み固めることを目論んだ。そこで、19世紀終わりに発見され驚くべき速さで受容された、X線写真をはじめとする画像技術を言わば事例研究として選択した。人間のからだの内部を外部化し客観化するこれら画像は、あくまで読み取られ構成されたものなのだが、医者集団のみならず多くの一般の人々にも、陶酔的な魅力をもつものであった。これら映像によって、体験としてはもともと不在であったからだの内部が、衆人環視されうる客観的なものとして、引き出されたものである。強めの表現を用いるなら、この点で、もはやからだに内部はないのである。さらに、それら引き出されたものこそが真なるものとして、賞揚され受容されていったのである。 また、上記に並行して、主として生命倫理学との関係で、からだもしくは身体の「所有」という概念について考察を行った。「私のからだは私のものである」というある意味で自明な考え方を改めて考察したのである。歴史的に見て身体所有は近代的概念であると言えるが、その所有を「贈与されたもの」と見るか「財産」と見るかが、伝統において大別できる二つのタイプである。現代のわれわれにとって問題となるのは、このどちらのタイプを採用するべきかといったことではなくて、われわれ自身が身体所有に関してどのような見方をしているかということを、伝統的な見方を参照しつつ、冷静に分析することである。臓器移植をはじめ身体もしくはからだの存在をどう考えるかに関連する問題が数多く出現しているが、おそらくは、身体所有という概念そのもの、私のものとしてからだを捉えることそのものにも、それら問題の淵源があると思われる。
|