1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610061
|
Research Institution | Keisen University |
Principal Investigator |
稲本 万里子 恵泉女学園大学, 人文学部, 専任講師 (20240749)
|
Keywords | 後白河院 / 彦火々出見尊絵巻 |
Research Abstract |
後白河院(1127-1192)はさまざまなジャンルにわたる浩瀚な絵巻を作らせたことが知られるが、その多くは失われ「伴大納言絵巻」「吉備大臣入唐絵巻」「病草紙」「餓鬼草紙」「地獄草紙」などが現存するのみである。これらの絵巻研究は個別の作品研究が中心であり、後白河院による絵巻制作の全容とその意味は未だ明らかにされていない。これは「年中行事絵」をはじめとする行事絵や「彦火々出見尊絵巻」が模本でしか現存していないことが要因であると考えられる。本研究は、今まであまり注目されることのなかった模本の調査研究と資料収集を通して、後白河院の絵巻制作とその機能を複眼的に、また総合的にとらえるものである。 平成11年度は、既に調査をおこなった福井・明通寺所蔵「彦火々出見尊絵巻」模本および東京国立博物館保管「彦火々出見尊絵巻」模本の画像資料を入力し、人物表現を中心に「伴大納言絵巻」および「吉備大臣入唐絵巻」との比較検討をおこなった。「彦火々出見尊絵巻」に描かれた人物は、絵所絵師常磐光長系の表現としてパターン化されていることが明らかになったが、龍王の姫君の得意な表現から、治承2年(1178)平徳子の皇子出産が絵巻制作の契機になったと考察される。本年度は当初、明通寺本、東博本以外の模本調査および写真撮影を予定していたが、入力作業を進めるために、国内旅費および調査費を設備備品費に計上し、入力機器と「伴大納言絵巻」の大型図書を購入した。模本調査は平成12年度に実施する予定である。
|