2000 Fiscal Year Annual Research Report
「甘えの心理」測定尺度開発および甘え行動・交流状況の認知過程の分析
Project/Area Number |
11610126
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
加藤 和生 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 助教授 (00281759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸野 俊一 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 教授 (30101009)
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Keywords | 成人の甘えの心理 / 成人の愛着 / 個人差(スタイル・タイプ) / 人格 / 社会・認知心理学的視座 / 素朴概念の分析 / 認知プロセス / EQと情動制御 / 尺度構成 |
Research Abstract |
本年度の研究実績は,以下の通りであった: 甘えタイプ尺度,認知過程,態度・感情尺度等の信頼性の検討 H11年度では尺度構成までなされたが,本年度ではこれらの尺度の再テスト法による信頼性の検討を行った. 甘えタイプ尺度の特性の検討:関連する心理学的概念のと対応関係の検討 H11年度で構成した甘えタイプ尺度の特性を解明すると同時に,甘えタイプの構成概念の妥当性の検討を行うために,既存の尺度との相関関係を検討を行った.「上手な甘え」には,現在注目されつつあるEQ(情動知能)や情動制御能力が深くかかわると予想され,甘えタイプによるこれらの能力の違いを検討した.また,前回科研プロジェクトの研究では甘えに対する抵抗感と神経症傾向と連関が明らかとなっているが,その知見を追試すると同時に甘えタイプによる違いを検討することで,両者の関係をさらに分析した.最後に,甘えスタイルの違いを生み出す要因として家族内での対人関係経験をあわせて検討した. 甘えタイプと愛着スタイルとの関係の検討 本研究プロジェクトを展開してくる中で,甘えの概念とボルビー(1982)が理論化していた愛着や愛着行動の概念との対応関係を明確化する必要が生じた.そこで,甘えの概念と愛着・愛着行動の概念とを2つのレベルでの分析を試みた.第1に,それぞれの概念に対応する行動について自由記述をもとめ,その内容分析を通して大学生がもつ素朴概念の分析を行った.その結果,甘えに固有な側面と考えられる側面が明らかとなった.また愛着研究で使われている愛着の概念規定の曖昧さが浮き彫りにされた.次に,本研究プロジェクトで開発した甘えタイプ尺度と既存の愛着スタイル尺度との対応性の分析を試みた.その結果,両尺度の一致度はある程度認められたが,全く一致するものでないことが明らかとなった.
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[Publications] 中尾達馬,加藤和生: "愛着行動とはなにか:内容分析を通して"九州大学心理学研究. 2(印刷中). (2000)
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[Publications] 高松雄太,加藤和生: "甘え,甘えること,甘えさせの素朴概念の分析"九州大学心理学研究. 2(印刷中). (2000)
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[Publications] 加藤和生: "心の知能(EQ)とは:情動知能の理論"教育と医学. 47(3). 238-246 (1999)
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[Publications] Kato,Kazuo: "Concordance of attachment and amae to multiple figures in Japanese college students"2001 Annual Meeting of American Psychological Society. (発表予定).
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[Publications] 丸野俊一,加藤和生: "植田・岡田(編),協同の知を探る:創造的コラボレーションの認知科学(1部5章)"共立出版. 26-30 (2000)
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[Publications] 加藤和生: "丸野俊一(編),心理学のなかの論争:発達心理学における論争(第2章)"ナカニシヤ(印刷中). (2000)