2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610274
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
園田 貴章 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (40171392)
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Keywords | ソ連邦崩壊 / 公民教育 / 歴史教育 / 歴史教科書 / 歴史心情 / 歴史教育の方針 |
Research Abstract |
1.【歴史教科書】ソ連崩壊後のロシア史教育で最も大きな課題は、教科書は「だれ」に向けて書かれるべきかの問題である。3つの教科書の方向性が検討されている。その1つは、ロシア連邦のすべての学校に共通するロシア史教育、その1つは、各民族ごとの歴史教育、そして、ロシア人のみを対象とするロシア史教育である。現在、第1番目の方向が有力となっている。しかし,それにより問題点がかえってはっきりしてきた。つまり、ロシア人とロシアに住む非ロシア諸民族との間に「共通の祖国」が存在したかの問題である。 2.【歴史心情】ソ連邦時代、自国史は外国からの侵略に常に晒されてきた歴史として描かれていた。結果、人々の脳裏に外国恐怖心が刷り込まれることとなり、それはまた、「世界の価値観」への無関心と軽視へと繋がった。例えば、国連の世界人権宣言は、西側資本主義諸国の欺瞞的態度として人々の目に映り、西側の民主主義も「太った人間の民主主義」と軽視する向きがあった。 3.【歴史教育の方針】現在、ロシアでは、自国史をどのように捉え教育すべきか、その指針が明確ではない。モスクワとノヴォシビルスクでの歴史担当教師への聞き取りによれば、どういう内容の歴史を教えるかではなく、生徒に歴史認識の方法を教えることが大事だということであった。授業では、生徒によるディスカッションが盛んに行なわれていた。しかし、歴史認識の方法の指導はもちろん重要であるが、国民共通の歴史認識のその内容・中身をつくる方針が未だ共通理解されていない状況にあると筆者は捉えている。
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