1999 Fiscal Year Annual Research Report
初期中世ポ-ランドの国家・社会構造-公の権利体制-の研究
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11610406
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
井内 敏夫 早稲田大学, 文学部, 教授 (60120903)
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Keywords | 公の権利 / ブチェク、カロル / モゼレフスキ、カロル / ナジャズ / レガリア / 貢租 / 労役 |
Research Abstract |
本年度の研究目標は貢租・労役制度と行政制度に関する研究史の整理であった。このうち前者については概ね満足のゆく成果が得られたので、この点に関して新たに得られた知見を中心に記す。 13世紀のインムニ文書には「公の権利の諸負担」という概念が登場する。この範疇の負担のすべてを負っていたのが「村人」と呼ばれる一般農民であったが、個々の貢租や労役に関する詳細な情報を含む文書はわずかであり、しかも相互に矛盾する内容が多々みられる。それゆえ、この分野の本格的な研究は19世紀末に始まったが、ほぼ共通の理解が得られるような段階に達したのはようやく70-80年代の、K.ブチェクとK.モゼレフスキの研究によってであった。「公の権利の諸負担」は定期の貢租と臨時の義務とに分けることができる。定期の貢租には、各世帯が負うものとして、穀物貢租に転化したストルジャ(城砦の見張り番役)、地方や年代によって賦課単位が雄牛の頭数(ポヴォウォヴェ)・犂の数(ポラドルネ)・家屋(ポディムネ)、と異なる穀物貢租、蜂蜜や穀物・千草が要求される接待義務(スタン)があり、その外に、集落に豚(ナジャズ)や雌牛・羊(ポドゥヴォロヴェ)の供出が課された、ヴィエルコポルスカと東ポモージェではオポレに牛の提供義務(オポレ)があった。臨時の義務としては、城砦・橋・道路・逆茂木の建設と補修、地域防衛への参加、役人関係の送迎(ポヴズ)、物資や犯罪人の輸送(プシェヴド)、運送用の馬・牛・荷車の貸し出し(ポドヴォダ)が課され、このうえ臨時のポラドルネとスタンがあった。ナジャズは森のレガリアと関係する。このテーゼの問題点は13世紀の史料で割り出したこのような制度の始期をほぼそのまま10-11世紀の国家形成期にまで遡らせることにある。私見によれば、ナジャズを初めとする以上のような整備された貢租制度は12世紀半ば以降に完成を見た可能性を排除できない。
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Research Products
(1 results)