2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610561
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 奈良彦 九州大学, 大学院・言語文化研究院, 助教授 (90184762)
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Keywords | ディベート / 談話 / ディスコース / コミュニケーション / 議論 / 討論 / スピーチ / 日米比較 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、「アカデミック・ディベート」と呼ばれる日米の教育・競技を目的とするディベートの談話構造の分析方法を検討し、同時に、ディベートの試合のデータを収集し文字化を行った。 日本人参加者による日本語のディベートと日本人参加者による英語のディベートについては、ほぼ計画どおりの数の録音・録画をすることができた。アメリカ人による英語のディベートについては、予定した数が確保できていないので、対策を検討中である。ディベートの文字化は1/3程度終了し、現在残りの文字化を急いでいる。 議論の論理構造(特にトゥールミンのモデル)を分析の枠組みの一つとして検討を加えた。コード化を行う場合、あるコード化単位(命題)がモデル内のどの要素に該当するかの認定はディベートが行われているスピーチ・コミュニティーの成員(研究代表者を含む)が発話者の意図性を推測して行う。ただし、実際のディベートの中で発話者以外の参加者の別解釈が生じている場合など、例外的に折衷的な調整を加える必要があると考えられる。 議論の構造の階層性について検討を加えた。たとえば、ある議論1の「根拠」が別の議論2によってさらに支えられているとき、構造記述は平面的に行い議論1の根拠(根拠1)と議論2の主張(主張2)を同一のコード化単位(命題)に対して[根拠1/主張2]のようなコード化を行うことが解決策1である。同じデータを入れ子状に構造記述を行い[根拠1[議論2]]のようなコード化を行うことが解決策2である。論理構造の記述としては解決策2の方が妥当のように思われるが、時系列に沿って生成される談話構造の記述としては解決策1のほうが直観的である。ただし、ディベートのスピーチにおいてはサインポストと呼ばれる談話標識が明示的に現れるので入れ子構造にある程度の実体性があるかもしれない。
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