2000 Fiscal Year Annual Research Report
無形の利益が侵害された場合の損害賠償における損害の把握と賠償額の決定
Project/Area Number |
11620042
|
Research Institution | KOBE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
窪田 充見 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (60186450)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
手嶋 豊 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90197781)
大塚 直 学習院大学, 法学部, 教授 (90143346)
山田 誠一 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (60134433)
水野 謙 青山学院大学, 法学部, 助教授 (90250406)
|
Keywords | 損害 / 因果関係 / 自己決定権 / 説明義務 / 独占禁止法 / 純粋経済損害 / 慰謝料 |
Research Abstract |
無形の利益が侵害された場合の損害賠償における損害の把握と賠償額の決定に関して、(1)損害論のあり方(水野)、(2)延命利益の賠償(大塚)、(3)自己決定権侵害における損害賠償(手嶋)、(4)純粋財産損害の賠償(山田)、(5)慰藉料請求権の内容と機能(窪田)の各テーマについて、各担当者が、我が国の判例と学説ならびに比較法的な状況を分析し、研究会においてその分析と解釈論的な提案を検討するという形で共同研究を進めた。 その結果、(1)損害論のあり方においては、担当者より、従来の裁判例の分析を踏まえたうえで、口頭弁論終結時までの「プロセスにおける不利益状態」を類型ごとに規範的・金銭的に評価したものを損害と捉えるという従来の損害=事実説対差額説という図式に入らない損害概念の把握が提案され、検討された。(2)延命利益の賠償については、近時の最高裁判決を、延命利益論、割合的因果関係論、確率的心証論、機会の喪失論、救命率に応じた救命可能性の侵害論などの最近の理論的枠組の中で、どのように位置づけるのかが検討された。そして、各法理論を具体的な場面で用いることの可能性と妥当性、相互の帰結の違いについて詳細な分析が加えられた。(3)自己決定権侵害における損害賠償においては、医療における自己決定権侵害を理由とする損害賠償額の決定について、従来の裁判例のマクロ的ならびにミクロ的な分析がなされ、具体的にどのような衡量要素によって賠償額が決まっているのかが析出された。(4)純粋財産損害の賠償については、この問題が、権利構成の法秩序に組み込まれてこなかった問題であるとして、裁判例の検討を手がかりとして、一般財産の状態自体が被侵害法益となるのではないかとの提案がなされた。(5)慰藉料請求権については、ドイツ法の判例の展開を分析し、慰藉料の機能の拡張に関する問題が精神的損害固有のものではなく、損害賠償法一般の役割の問題として位置づけられるべきものに変遷してきたことを分析した。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] 水野謙: "損害論のあり方に関する覚書-近時の最高裁判決を手掛かりに"ジュリスト. 1199号(掲載予定). (2001)
-
[Publications] 大塚直: "不作為医療過誤による患者の死亡と損害・因果関係論-2つの最高裁判決を機縁として"ジュリスト. 1199号(掲載予定). (2001)
-
[Publications] 手嶋豊: "医療における同意の前提としての説明義務に違反したために認められた慰謝料の算定に関する考察"ジュリスト. 1199号(掲載予定). (2001)
-
[Publications] 山田誠一: "独占禁止法違反の行為にもとづく損害賠償-民法709条の要件論における位置づけ"ジュリスト. 1199号(掲載予定). (2001)
-
[Publications] 窪田充見: "ドイツ法における慰謝料請求権の機能の変遷-BGHのカロリーヌ・モナコ王女事件判決をめぐる状況"ジュリスト. 1199号(掲載予定). (2001)