1999 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける患者の自己決定と司法-イギリス医事法の展開と日本法への示唆
Project/Area Number |
11620045
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
五十川 直行 九州大学, 法学研究科, 教授 (80168286)
|
Keywords | イギリス医事法 / 患者の自己決定権 / 医事法 / 医師の法的責任 / イギリス民事法 |
Research Abstract |
初年度[基礎研究]にあたる本年度は、イギリス医事法に関する広範な理解を多面的に推し進めることを目途として立案された。右の研究実施計画に沿い、研究の実施に際しては、始めに、広くイギリス医事法に関する膨大な基本的文献/資料の確定作業から手掛け、イギリス判例法等の史的展開を意識しつつ、イギリス近代以降の医療に関する判例法(リーディング・ケース)・学説・立法等の展開状況につき、その詳細を追蹤し検証する研究が推進された。具体的には、ことに、Medical Law Reviewを含め、イギリス医事法の最新情報の入手・検討作業が中核となった。同時に、焦点を民事法領域に集約したうえ、契約法・不法行為法などの伝統的な法領域内で蓄積されてきた19世紀以来の法理論の検討作業にも従事し、医療問題への民事法領域からのアプローチを歴史的に跡付ける研究が実施された。ここではことに、イギリス不法行為法の展開状況の確定作業が有益であった。さらには、医師の注意義務、因果関係論、患者の自己決定権、生殖医療、末期医療など、世界的に共通する具体的課題をめぐるイギリスの法状況についても、抽出作業が遂行された。ここではことに、ヒト受胎法[1990年]などの立法のほか、尊厳死に関するBlandケース[1993年]、注意義務・因果関係論に関するBolithoケース[1997年]、患者の自己決定権に関するReMBケース[1997年]などの裁判例が、必須の研究対象として確定された。 本年度における以上略記の研究作業により、現代のイギリス医療をめぐる数多くの民事法的論点につき、一応の基礎的な知見が獲得され、所期の目標は達成されたものと思料される。次年度にあっては、さらにここで得た知見を推し進め、わが国も含め、イギリス以外の諸国における医事法の潮流と応接させられたうえで、「イギリス法における「患者の自己決定」ヘの司法的規律のありかた」の考究に結実することが期待される。
|