2000 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける患者の自己決定と司法-イギリス医事法の展開と日本法への示唆
Project/Area Number |
11620045
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
五十川 直行 九州大学, 大学院・法学研究院, 教授 (80168286)
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Keywords | イギリス医事法 / 患者の自己決定権 / 医事法 / 医師の法的責任 / イギリス民事法 |
Research Abstract |
本研究は、民事法学的アプローチから『医事法』領域に踏み込み、焦点を「イギリス法における患者の自己決定」に据える継続的研究であり、あわせて、イギリス法と日本法との比較法学的な研究手法を通じ、わが国の医事法学の展開への主体的寄与を志すものである。昨年度にあって、イギリス医事法に関する一応の基礎的知見が獲得されたのを踏まえ、本年度は、本研究の最終年度として、右の基礎的知見を一層深化させ、わが国のほか、イギリス以外の諸国(ことに、アメリカ、オーストラリアなど)における医事法の潮流などとも応接させたうえ、「イギリスにおける『患者の自己決定』への司法的規律のありかた」に関する考究を結実させることを企図した。具体的には、妊婦の意思に反する帝王切開術の強行、宗教上の理由等による診療拒絶、植物状態(PVS)患者の生命維持装置の取り外し、などのいわゆるAffirmative Actionsのほか、臓器移植術、人工生殖術、難治療、緊急治療、高齢者医療など、それぞれの具体的な医療実践の局面ごとに、可能な限り渉猟を尽くした文献・情報の活用を通じ、「患者の自己決定と司法」をめぐる現代イギリス法の到達点を精査したうえ、これらに対する一定の評価を「日本法への示唆」のかたちで総括することを試みた。同時に、本研究と密接に関連する研究実績として、本研究代表者は学会シンポジウム『医療情報の活用と開示』(第102回九州法学会)を企画し、かつ、本研究による成果の一斑として、「医療情報開示と患者・医師関係」報告を実施した。 本研究と同シンポジウムは、「医師-患者関係における『患者の自己決定』のありかた」を基本的な検討課題とする点において共通するものであった。今後とも、イギリス法などを研究素材として、本研究の成果がさらに一層展開されることが期待される。
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