2002 Fiscal Year Annual Research Report
法律上取締役でない者が会社経営に従事した場合に生じる会社法上の諸問題の総合的研究
Project/Area Number |
11620048
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
北村 雅史 大阪市立大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90204916)
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Keywords | 事実上の取締役 / 取締役の責任 / 影の取締役 / 競業避止義務 / コーポレート・ガバナンス |
Research Abstract |
本研究では、法律上取締役でない者(以下事実上の経営者という)が会社経営に関与した場合に生じる法的諸問題を、日本法上の研究関心から、事実上の経営者の会社に対する責任、第三者に対する責任、取締役が他の会社の事実上の経営者となった場合の競業取引・利益相反取引規制および事実上の経営者の行為についての会社の責任に分けて、比較法的考察を踏まえて検討することが当初の目的であった。そのようなスタンスで研究をすすめるうち、各国においてこの種の問題の扱われ方に相違があることが明らかになった。 アメリカではいわゆる支配株主の少数株主または従属会社に対する信認義務という形で判例法が展開し、取締役に類似の会社に対する義務および責任法理が発展していった。イギリスでは、取締役が指図に従って行動することを常とするその指揮者または指図者を影の取締役とよび(1985年会社法741条)、影の取締役の会社または会社債権者に対する義務および責任に関する法理が発展するとともに、それとは区別されるものとしての事実上の取締役概念が判例法上形成されている。ドイツでは、支配株主(社員)の(従属)会社または従属会社債権者に対する責任に関して、従来のコンツェルン法の類推とは別の透視責任(法人格否認の法理)や事実上の機関といった議論が最近の判例の展開において見られる。韓国では、1998年改正により事実上の取締役の会社または第三者に対する責任に関する規定が設けられ、同規定に関する解釈論が展開されている。 また、この間、平成14年の商法改正により導入された委員会等設置会社において、会社経営機構の変革がなされ、また取締役等の責任に関する規定の改革もなされたので、平成13年度と14年度においては、本研究テーマと関係する範囲で、改正法の研究も比較法的に行った。
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[Publications] 北村 雅史: "株式会社における経営管理機構改革--各種委員会制度を中心に"法学雑誌. 48巻4号. 1211-1235 (2002)
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[Publications] 北村 雅史: "取締役の責任軽減と株主代表訴訟"民商法雑誌. 126巻4・5号. 565-587 (2002)
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[Publications] 北村 雅史: "取締役の競業避止義務"有斐閣. 231 (2000)