1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11630013
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
阿部 顕三 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (00175902)
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Keywords | 再生可能環境資源 / 南北貿易 / 比較優位 / 貿易利益 / コモンズ |
Research Abstract |
本年度は、環境と直接投資の関連を分析するための基礎として、これまでの環境と貿易に関する理論的論文を整理し、その中で十分な分析が行われていないものについて新たな分析を行った。特に、再生可能環境資源を含むChichilniskiの南北貿易モデルを利用して、比較優位構造や貿易利益に関する新しい結論を得た。 われわれの想定したモデルは次のようなものである。2つの貿易可能な最終財が労働と環境資源財を用いて生産される。また、環境資源財の生産は環境資源のストックに労働を投入して行われる。この環境資源財は国内財であると仮定する。環境資源のストックの変化はその自然成長率と環境資源財の生産量によって規定される。また、先進国(北)では環境資源財に私的所有権が設定されて生産が行われるのに対して、発展途上国(南)ではそれがコモンズとして利用されており、環境集約財が過大に生産されている。また、すべての市場は完全競争的であるとする。 このモデルで得られた主要な結論は次の通りである。第1に、環境集約的な財に対する相対需要非常に小さい場合には途上国が環境集約財に比較優位を持つ。それが大きい場合には、均衡のワルラス的安定性を仮定すれば、先進国が環境集約財に比較優位を持つ。第2に、環境集約的な財に対する相対需要が非常に小さい場合には先進国が貿易による利益を享受する可能性が高いのに対して、それが中程度の場合には発展途上国が貿易による利益を享受する可能性が高い。また、それが非常に大きい場合には、両国とも貿易によって損失を被る可能性がある。
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