2000 Fiscal Year Annual Research Report
中東産油国における金融システムの安定性に関する研究
Project/Area Number |
11630044
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
水島 多喜男 徳島大学, 総合科学部, 教授 (10219628)
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Keywords | 中東 / 産油国 / 金融 / 危機 / イスラーム / 国民経済 / 経済 |
Research Abstract |
イスラーム銀行制度を原理的な理論から評価した場合,その核心はリバーの禁止であるが,その原則的立場に対しては,(1)金融が短期的なものに限定されがちになる,(2)ベンチャー・ビジネスへの融資が行われにくい,(3)手形割引が困難,(4)経済変動に対する銀行の耐性が限られる,(4)社会基盤の整備など,直接の生産活動に係らない事業への投資が制限される,(5)金融市場が形成されにくく,社会的な資金分配が非効率化する,(6)非イスラーム銀行制度の金融機関との取引の整合性がとりにくい,などを問題点として指摘できる.他方,現実には様々な迂回路を通じて利子が導入された場合と同じ環境が作られており,このような問題点は現実には回避されている,とみなされてもいる. また,中東諸国の金融制度は,国民国家の成立に従い,中央銀行を持つ体系として整備されてきたが,各国の制度はさらにIMF,IBRD,等の国際機関により,その制度的安定性が補強され,国際金融市場への依存も深い. イスラーム的価値観が重視されるパキスタンでは,国民経済のイスラーム的な運営が決定されたが,その帰趨はいまだ明らかではない. 12年度には,非イスラーム近代世界の金融に関する論理を整理するとともに,このような多重構造を持つ中東の金融制度の資料収集を中心に作業を進めた.
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