2000 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本の消費財メーカーにおけるマーケティング戦略の経営史的研究
Project/Area Number |
11630088
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
佐々木 聡 明治大学, 経営学部, 教授 (40205844)
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Keywords | ライオン / 花王 / 流通戦略 / 物流システム / ユニット・ロード |
Research Abstract |
本年度の研究実施計画で記したように,本年度は,政府の流通政策や外部環境の変化に関する流れの再検討と,当時のアカデミズムの構想や評価の再吟味,さらにはトイレタリー・メーカーの競争戦略の展開などについて検証した。このうち流通政策史と当時のアカデミズムの構想の評価については,従来の通説をくつがえすほどの研究上の展開がみらなかった。しかしながら,いちおうの全体像と流れおよび波及効果などについて再確認することができた。 次にトイレタリー・メーカー自体の流通戦略については,1970年代から80年代初めにかけてのライオン油脂(1980年1月のライオン歯磨との合併後はライオン)による流通戦略のなかでも,とくに物流戦略について実証的な検討を進めた。これによって明らかにされた概要は,次の通りである。 ライオンでは,1970年代初め以降,販社を基盤にユニット・ロードを軸とする物流近代化を進めた花王に対抗するため,1975年度を目途とする物流合理化長期計画を策定して,物流近代化に取り組み始めた。その基本線は,物流量の違いから大都市型と地方型に分けて物流システムを構築することにあった。この構想は,卸店の理解と協力を得ながらいちおう実施に移された。しかしながら,1970年後半になって,目前に迫ったライオンは歯磨との合併後のシステムを考慮すると取扱製品の違による物流の違いの問題があり,他方で拠点の分散化は在庫増加につながるとの考えから、地方型を撤収し,これをサービス・センターとして新たに位置づけていくこととなったのである。ある意味では,今日的にも合理性を有する構想が頓挫したかたちとなったといえよう。その後,ライオンでは物流情報システムの設計を目指していくこととなった。 なお,この地王型物流システムの構築に関与した地方卸店の取材も実施し,別のサイドからの検証も行った。
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