結晶位置選択励起法による酸化物超伝導体の電子構造に対するPrの影響の研究

1999 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11640341
• Research Institution: The University of Electro-Communications
• Principal Investigator: 山田 修義 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (40017405)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 手塚 泰久 弘前大学, 理工学部, 助教授 (20236970) ; 中村 仁 電気通信大学, 電気通信学部, 助手 (50313416) ; 山崎 尚 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (00017394) ; 山田 裕 島根大学, 総合理工学部, 助教授 (10242835)
• Keywords: 高温超伝導 / X線吸収分光 / X線発光分光

Research Abstract

高温超伝導銅酸化物のうちRBa2Cu307(Rは希土類元素)は、希土類元素の種類に依らずほとんど同じ90Kの超伝導臨界温度Tcを持つ。しかしその唯一の例外がPrBa2Cu307で、半導体になり超伝導にはならない。この現象にたいして、Fehrenbacher and Riceは、Pr4fと02pの混成によりPr4fと酸素02pπとの反結合準位PrIV(pπ*)だけがCu02面のZhang-Rice singlet準位(pσ*)の上に位置し、p-ホールがPrIV(pπ*)に移行することにより、Pσホールが減少し超伝導は消失するとのモデルを提案した(Fehrenbacher and Rice,Phys.Rev.Let.1993)。
我々は、これを検証するためにPrBa2Cu307とYBa2Cu307の単結晶に放射光による酸素1sから2pホールへのX線吸収スペクトルと発光スペクトルの偏光解析実験を行った。吸収実験は、KEK-PFにおいて行い、発光スペクトルの実験は、米国ローレンス・バークレイ研究所ALSにおいて行った。吸収スペクトルから、鎖位置にある酸素一種類(O(1))面内酸素2種類(O(2),O(3))、頂点酸素一種類(O(4))の計4種類の酸素のホールの状態を識別する事に成功した。吸収実験で識別された酸素位置を選択的に励起しそこでの発光スペクトルの観測からそれぞれの酸素位置での局所的電子状態の知見を得た。鎖位置にある酸素一種類(O(1))、頂点酸素一種類(O(4))では、PrBa2Cu307とYBa2Cu307の試料でほとんど同じ形状のスペクトルを観測したが、面内酸素2種類(O(2),O(3))では、PrBa2Cu307 と YBa2Cu307 とで明らかなスペクトル形状の差異が観測された。この結果は、Liechtenstein and Mazinの計算結果と比較し、よく一致していることを見いだした。これは、Cu02面上の酸素がPrとの共有結合性を有することの反映である。