1999 Fiscal Year Annual Research Report
X線発光分光法をもちいた準結晶の特異な電子構造の解明
Project/Area Number |
11640368
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 康裕 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (80182955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
七尾 進 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (60013231)
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Keywords | 準結晶 / 発光分光 / 放射光 / 正二十面体相 / 正十角形相 / Al-Pd-Mn / Al-Mn-Si / Al-Mn-Fe-Ge |
Research Abstract |
本研究は、最近放射光を利用して測定され始めた発光分光法を用いて、準周期的な系である準結晶の電子状態について新しい知見を得ることを目的としている。初年度は、高エネルギー加速器研究機構放射光施設において6日間のビームタイムをもちいて、代表的な準結晶相の発光スペクトルを得た。 F型正二十面体相のAl-Pd-Mn準結晶、P型正二十面体相のAl-Mn-Si準結晶、正十角形相のAl-Mn-Fe-Ge準結晶、およびAl-Mn-Si準結晶にきわめて近い局所構造を取っていると考えられるAl-Mn-Si系α相に関してそのMn原子の吸収端近傍で入射線のエネルギーを変えながら、Kβ1,3(3p→1s)発光分光を行った。また、Al-Mn-Fe-Ge準結晶に関してはFe原子の吸収端近傍で、Kβ1,3の測定を行った。同時に対象のため一連のMn化合物(KMnO4、MnO、Mn2O3、MnO2)についても測定した。これらの準結晶(およびα相)は、局所的な電子構造をもっているMn化合物と遍歴電子系である金属Mnの中間の発光スペクトルを示した。これは、これらの準結晶が局在系と遍歴系の中間の電子状態にあることを反映している。Al-Mn-Si準結晶とα相のスペクトルはほぼ一致し、この準結晶と近似結晶が非常に近い電子状態にあることがこの測定でもあきらかになった。Al-Pd-Mn準結晶のスペクトルもこの両者に非常に近いがスペクトルに特異な構造が見られる。また、Al-Mn-Fe-Ge準結晶に関しては比較的大きなサテライトピークがあらわれ、spin分裂が常温においても比較的大きいことがわかる。この結果については、2000年春の物理学会で発表の予定である。 次年度は、Zn-Mg-RE(RE:希土類)系の正二十面体準結晶の、希土類吸収端をもちいた発光分光、およびAl-Pd-Re系準結晶の発光分光の温度変化を測定する予定である。
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