2002 Fiscal Year Annual Research Report
走査トンネル顕微鏡の探針と金属表面の原子架橋における量子輸送現象の理論的研究
Project/Area Number |
11640375
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
笠井 秀明 大阪大学, 工学研究科, 教授 (00177354)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 寛 大阪大学, 工学研究科, 助手 (40237326)
|
Keywords | 原子架橋 / ナノワイヤー / 磁性 / STM / 量子化電気伝導 / バナジウム / 鉄 / ニッケル |
Research Abstract |
これまでに、鉄原子架橋において架橋断面に2つの原子を含む場合には、ねじれた梯子構造が安定であることを見出している。昨年度、この構造の原子架橋において鉄原子をニッケル原子と置換したFe_<1-x>Ni_x合金原子架橋の磁性状態について第一原理計算を行い、平均磁気モーメントは、Slater-Pauling曲線上の対応するバルク合金中での値に比べ、大きくなることを見出した。今回Slater-Pauling曲線の左下がり部分に相当するFeV合金原子架橋の磁性状態について調べた結果、磁気モーメントはバルクと同等以下と、右下がり部分とは対照的な結果を得た。 更に、Fe_<1-x>Ni_x合金原子架橋のサブバンド構造を解析し、スピン依存量子化電気伝導について調べた。その結果、多数スピン電子の電気伝導への寄与は、Ni混合比xに,依存せず、少数スピン電子の寄与は、xに敏感に変動することを見出した。これは、次のように説明される。多数スピン電子のd-bandは、フェルミレベルより低エネルギー側にシフトし、s-like bandのみが、フェルミレベルと交差する。また、s-like bandは、バンド幅が大きく、多少対称性が崩れ、レベルがシフトしても、フェルミ面と交差する多数スピン電子のサブバンド数は変化しない、このため多数スピン電子の電気伝導への寄与はxに依存しない。これに対し少数スピン電子のd-bandは,フェルミレベル近傍にあり、バンドレベルシフトにより、フェルミ面と交差する少数スピン電子のサブバンド数は著しく変化するため、xの変化に敏感に少数スピン電子の電気伝導への寄与は変化する。 このように合金化を行えば、原子架橋のスピン依存量子化電気伝導の制御が可能であることが示された。この知見を応用して、バリスティックなスピン伝導におけるスピン偏極度を設計できる。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Hideaki Kasai, Hiroshi Nakanishi, Tomoya Kishi, Fumio Komori, Ayao Okiji: "Magnetic properties of Fe-Ni alloy atom bridges"Surface Science. 514・1-3. 156-160 (2002)
-
[Publications] Hiroshi Nakanishi, Hideaki Kasai, Tomoya Kishi, Fumio Komori, Ayao Okiji: "Transport and Magnetic Properties of Magnetic Alloy Atom Bridge"Physica E. (in press). (2003)
-
[Publications] Daisuke Matsunaka, Hideaki Kasai, Hiroshi Nakanishi, Ayao Okiji.: "The effects of nonmagnetic impurity atoms on the electronic states of CuO_2 planes"Surface Science. 514・1-3. 123-129 (2002)
-
[Publications] Taro Shirai, Hideaki Kasai, Wilson Agerico Dino, Hiroshi Nakanishi, Ayao Okiji.: "Interacting electrons in one-dimensional confinements"Surface Science. 514・1-3. 95-99 (2002)
-
[Publications] Yuki Shimada, Hideaki Kasai, Hiroshi Nakanishi, Wilson Agerico Dino, Ayao Okiji, Kazuhiko Hasegawa.: "The theoretical analysis of quantum mirages on the Cu(111)surface"Surface Science. 514・1-3. 89-94 (2002)
-
[Publications] Daisuke Matsunaka, Hideaki Kasai, Hiroshi Nakanishi, Ayao Okiji.: "Effects of oxygen vacancies on the electronic states in copper oxides"J. Phys. Soc. Jpn. 71・9. 2247-2252 (2002)