2000 Fiscal Year Annual Research Report
7億年前に地球は全球凍結したか?ナミビアの縞状炭酸塩岩による検証
Project/Area Number |
11640414
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
川上 紳一 岐阜大学, 教育学部, 助教授 (80183036)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 照文 京都大学, 総合博物館, 教授 (40194245)
高野 雅夫 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90262849)
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Keywords | 地球史 / 現生代 / スノーボール・アース仮説 / 氷河時代 / 気候変動 / 炭酸塩岩 / 地球化学 |
Research Abstract |
本研究は、ナミビアで採集した縞状炭酸塩岩の解析に基づいて、スノーボール・アース仮説を検証することである。現生代後期の氷河堆積物を覆う縞状炭酸塩岩は温暖な気候で堆積したものと考えられており、地質学における大きな謎であるとされた。氷河堆積物と縞状炭酸塩岩の組み合わせは、地球表面が前面的に凍結したとすると合理的に説明ができる。しかし、そのようなことは気候学的にありえないとされてきた。 申請者らは、ナミビアで採集したラストフ縞状炭酸塩岩の化学的分析を行い、縞の解析から堆積速度の見積もりを試みてきた。層厚14mの縞状炭酸塩岩は、酸素、炭素同位体比からみて、3つの区間に区分されることが明らかになった。酸素同位体、炭素同位体比の変動は、スノーボール・アース仮説から導かれる論理的帰結と合致しているものと解釈された。現生代後期の炭酸塩岩の堆積環境の解析に、酸素同位体比が利用できることを世界に先駆けて示すことができた。 一方、縞の解析では、区間2にメートルオーダーの明瞭な堆積サイクルが認められていた。このサイクルは、カルサイトに富んだ部分とドロマイトに富んだ部分の繰り返しで特徴づけられる。それぞれのサイクルには、ミリメートルスケールのラミナがあり、メートルスケールの堆積サイクルには、約1500枚のラミナが含まれていることが明らかになった。ラストフ縞状炭酸塩岩のラミナが1年ごとの環境の繰り返しを反映していることを論じた。 一方、ナミビアのマイエバーグ縞状炭酸塩岩にはミリメートルスケールの縞とセンチメートルスケールの縞が形成されている。このような縞が潮汐リズムを反映したものである可能性を指摘した。この解釈によるとマイエバーグ縞状炭酸塩岩の堆積速度は、約25cm/年となる。 これらの縞の解析から縞状炭酸塩岩に記録された炭素同位体比の変動の時間スケールは、数1000年であると見積もられた。これは新生代古第三紀の突発的温暖化事件(LPTM)における炭素同位体比の変動の時間スケールに比べ、一桁近く小さいことになる。 以上の結果を総合すると、われわれが採集した氷河堆積物を直接覆う縞状炭酸塩岩の地球化学的特徴は、スノーボール・アース仮説と符合していることが明らかになった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 川上紳一: "ゲノム生物学と地球史"科学. 70. 241-243 (2000)
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[Publications] 川上紳一: "新しい地球史-スノーボール・アース仮説からの視点"科学. 70. 406-420 (2000)
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[Publications] 東條文治,川上紳一,吉岡秀佳: "スノーボール・アース仮説はどこまで検証されたか"月刊地球. 23. 203-207 (2001)
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[Publications] 川上紳一: "全地球史ナビゲータ&データベース-生命科学と地球科学の共進化に向けて"月刊地球. 23. 157-161 (2001)
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[Publications] 川上紳一,大野照文: "生命科学と地球科学の共進化へ向けて-地球史データベースをつくろう-"「生物の科学遺伝」別冊「地球の進化・生物の進化」. No.12. 184-191 (2000)
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[Publications] 川上紳一: "生命と地球の共進化"日本放送出版協会. 267 (2000)