Research Abstract |
鹿児島大学や九州大学の高精度の地震データを用い,南九州下の稍深発地震活動・地震面の形状・発震機構について解析した.稍深発地震面は,かなり複雑な形状であることが明らかになった.もっとも特徴的なことは,桜島を含む領域で地震面がずれていることである.すなわち,桜島の北北西側領域の地震面は,南南西側領域に比べ西北西方向におよそ10kmずれている.ずれは,深さ130kmでは水平距離50km程度の範囲で,深さ70kmでは80km程度の範囲で徐々に生じている.しかし,地震面の走向は,ずれの両側ともほぼ同じで,N25゜E-S25゜W程度である.地震面の断面形状は,基本的には緩やかに曲率を変えながら深部に繋がっている.しかし,詳細に見ると,深さ65km前後で浅い方に,深さ50km付近と100km付近では深い方に凸の,波打ったような形状である.深さ80〜130kmの範囲での地震面の平均的な傾斜角は60〜65゜であり,ずれの両側で差は認められない.深さ130km以深では,北北東側領域の傾斜角の方が大きくなっている.南九州の稍深発地震は,開聞岳下の深さ160km付近の活発な活動とその浅部の深さ70〜100km付近の低活動度で特徴づけられるが,この特徴的な活動が,地震面がずれている領域の近くに位置することは興味深い.南九州下に発生する稍深発地震の発震機構は,プレートの沈み込む方向の断面で見ると,張力軸は沈み込む方向に,圧縮軸はそれに直交する方向にほぼ揃っており,Down-DipExtension型の様相を示す.しかし,水平面で見ると,圧縮軸がプレートの進行方向に揃っており,張力軸は沈み込む方向からずれている.すなわち,この領域の稍深発地震の発震機構は単純なDown-DipExtension型とは言えない.以上のように,本研究によって,南九州下に沈み込むフィリピン海プレートには,単純な沈み込みに伴う力の他に,異なる力源が作用していると考えなければならないことが明かとなった.
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