2000 Fiscal Year Annual Research Report
超分子結晶中でのシッフ塩基類の異性化機構の解明と新規プロトン移動系の構築
Project/Area Number |
11640538
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川東 利男 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (40038477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
網本 貴一 九州大学, 大学教育研究センター, 助手 (60294873)
小山 弘行 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (10038490)
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Keywords | フォトクロミズム / 光異性化 / 固体反応 / 包接化合物 / 光学異性体 / サリチリデンアミン / シッフ塩基 / デオキシコール酸 |
Research Abstract |
純結晶状態でサーモクロミズムを示しフォトクロミズムは示さないN-(5-ハロサリチリデン)アニリン類のデオキシコール酸(DCA)包接結晶を合成して、その熱物性を調べた。さらに、熱物性の詳細を調べる過程で、シッフ塩基とDCAとを固相状態で混合し加熱すると包接化合物が形成されるという興味深い現象を発見した。 N-(5-クロロサリチリデン)アニリンとN-(5-ブロモサリチリデン)アニリンを橙色の針状結晶として合成単離した。さらに、そのDCA包接結晶をいずれも淡黄色針状晶として合成単離した。これらは全て^1HNMR、元素分析により同定し、包接化合物のホスト・ゲスト比はホスト:ゲスト=4:1と決定された。また、このホスト・ゲスト比を用いて、DCAとシッフ塩基との固相混合物を調製した。各試料の熱物性は、固体反射スペクトルを用いて調べた。その結果、シッフ塩基純結晶とそのDCA包接結晶では、室温での反射スペクトルは全く異なり、両結晶中でのシッフ塩基は違った電子状態をとっていることが分かった。両結晶を加熱していくと、シッフ塩基純結晶では加熱に伴う色調変化が肉眼で確認でき、大きな反射濃度変化が観測された。これに対し、包接結晶では加熱をしても色調変化が見られず、スペクトルにおいてもわずかな反射濃度変化しか現れなかった。更に、加熱による反射濃度の変化領域が、前者では540nm付近、後者では480nm付近と異なっていた。以上の結果は、DCAが形成する包接空間に取り込まれたシッフ塩基の構造が、純結晶状態での構造と異なることにより生じたものと考えられ、シッフ塩基の熱異性化には分子の存在状態が密接に関係することが示された。 また、シッフ塩基とDCAとの固相混合物を加熱したところ、70℃から80℃の間で包接化合物が形成されることを明らかにした。
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Research Products
(1 results)