2000 Fiscal Year Annual Research Report
12族金属チオレート錯体の構造予測のための分光法の開発と応用
Project/Area Number |
11640555
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤澤 清史 筑波大学, 化学系, 講師 (10251670)
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Keywords | 亜鉛錯体 / カドミウム錯体 / 水銀錯体 / チオレート錯体 / モデル錯体 / 金属調節タンパク質 |
Research Abstract |
重金属イオンによる分子認識として、金属調節タンパク質がある。これらのタンパク質群はシステインを多く含み、低分子という特徴があるが、取り込まれた金属イオンの配位数や配位構造は依然謎である。これは、亜鉛2価、カドミウム2価、水銀2価はd^<10>電子配置であるため、通常の方法では配位構造に関する知見を得ることができないためと考えられる。そこで、亜鉛2価、カドミウム2価、水銀2価のような12族金属チオレート錯体の合成を下記のように行い、その分光学的性質の測定を行った。 1 安定化配位子としてヒドロトリス(ピラゾリル)ボレート(=L)を用いて、LMCl,LMBr,LMSR錯体(M=Zn(II),Cd(II),Hg(II),R=C_6F_5,c-Hex,Adなど)を合成し、その構造をX線解析により決定した。M-Xの伸縮振動をfar-IRとFT-Ramanを用いて決定した。その値とM-S結合距離に相関関係があることを明らかにした。また、この効果はランタノイド収縮あるいは相対論的効果に起因することを12族金属錯体としては初めて証明した。 2 かさ高いチオールとしてアダマンタンチオール(=HSAd)及びシクロヘキシルチオール(=HSc-Hex)を用いて、2配位錯体(M(SR)_2)の合成を行った。しかし、無電荷の錯体のため溶解度が悪く、構造解析には至らなかった。さらに今後引き続いて、他の配位子系を工夫する必要があることがわかった。しかし、そのM-S伸縮振動および、硫黄から金属への電荷移動吸収帯のエネルギーが1と同様な挙動を示すことを明らかにした。 3 2と同じ配位子を用いて、3配位錯体((NEt_4)[M(SR)_3])(R=Ad,c-Hex)の合成を行った。このうち、亜鉛3配位錯体の構造解析に成功した((NEt_4)[M(SAd)_3])。これは世界で初めての成果である。これらの錯体を用いて各種スペクトル測定を行い、1と同様な挙動を示すことを明らかにした。 4 窒素と硫黄を分子内に持つ、N-メチルイミダゾリルチオール、アミノエタンチオールを用いて、亜鉛族錯体を合成し、その構造解析と性質の追及を行った。 上記の様に亜鉛族チオレート錯体に関して多くの知見を得ることができた。
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[Publications] D.W.Ranlall,K.Fujisawa E.I.Solomon 他3名: "Spectroscopic and Electronic Structure studies of Blue Copper Model Complexes 1: Perturbation of the Thiolate-Cu Bond"J.American Chemical Society. 112. 11620-11631 (2000)
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[Publications] Y.Yamada,K.Fujisawa,K.Okanoto,Y.Miyashita: "Synthesis, Crystal structure, and Sore Spectrochemal Propertres of S-Brodged Hexanuclear Zinc(II) Complex wth 2-Amro ether theolate."Bull.Chem.Soc.Jpn. 74・1. 97-98 (2001)
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[Publications] K.Fujisawa 他6名: "M-S Uibrational study in Three-Coordinate Thiolate Complouds (NFe_4)_2 [MCSC_6H_4-P-Xl_3]"J.Inorg.Btochem.. 82. 229-238 (2000)
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[Publications] P.Chen.K.Fujisawa E.I.Solomon: "Spectroscopic and Theoretical studies of Mononuclear Copper Aolkyl-and Hydroperso Complexes"J.American Chemical Society. 112. 10177-10193 (2000)
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[Publications] K.Fujisawa 他7名: "mononuclear Copper (II) Hydrxo Complex : Sterical Effect of a 3-Position of This (pyrazoly 1) borates"Bull.Chem.Soc.Jpn. 73. 1797-1804 (2000)
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[Publications] Y Yamada.K.Fujisawa K.Okamoto 他3名: "Synthesis, Crystal Structures, and Sone propertres of S-Bridged le (II)-M(III) Dimuclear Complexes"Bull chem.Soc.Jpn. 73. 913-922 (2000)