1999 Fiscal Year Annual Research Report
同翅亜目昆虫累の巨大精子束:その構造と婚姻贈呈物としての機能について
Project/Area Number |
11640636
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
林 文男 東京都立大学, 理学研究科・生物科学専攻, 助手 (40212154)
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Keywords | 精子 / 配偶行動 / 婚姻贈呈 / 多回交尾 |
Research Abstract |
昆虫類では、精子が束の状態(精子束)になってオスからメスへ渡されることが知られている。本研究では、同翅亜目昆虫類のうち、どのグループの種で精子束の形成が見られるか、精子束といっても分類上のグループ間でどのような構造の違いがあるか、精子束の機能としてオスからメスへのタンパク質の贈呈の可能性があるかについて調査した。各地で採集した同翅亜目に属する昆虫について精子の形態を観察した。その結果、セミ型類では、セミ科、アワフキムシ科、ヨコバイ科(ミミズク亜科、オオヨコバイ亜科)において精子束を形成していた。セミ科とヨコバイ科では、ロープ状の物質に精子の頭部が付着することによって精子が束ねられていた。アワフキムシ科では、棍棒状の物質に精子の頭部が付着して精子が束ねられていた。しかし、コガシラアワフキムシ科、ツノゼミ科、ヨコバイ科(ヒメヨコバイ亜科)では精子束の形成は見られなかった。一方、ハゴロモ型類では調べることのできたヒシウンカ科、ハネナガウンカ科、グンバイウンカ科、マルウンカ科、アオバハゴロモ科、ハゴロモ科のいずれにおいても精子束の形成がみられなかった。次に、精子束を形成するセミ科、アワフキムシ科、ヨコバイ科について、精子束をトリプシン処理した結果、いずれも束を形成する棍棒状あるいはロープ状の物質が溶け、精子はそれぞれ単独の状態になった。これらの種では、交尾後、精子束がメスの受精嚢に貯えられている間に、同様の分解が生じることから、メスの受精嚢内でトリプシン様物質の分泌があることが示唆された。最後に、ツマグロオオヨコバイについて、蛍光物質であるローダミンをオスに吸わせ、精巣を取り出し、蛍光実体顕微鏡によって観察した結果、ローダミンが取り込まれることを確認した。次の交尾期にこれらのオスと通常のメスをかけあわせて卵巣からローダミンが検出されるかどうかが今後の課題である。
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