2000 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアDNAの塩基配列から見た縄文人と弥生人の関係
Project/Area Number |
11640709
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Research Institution | 佐賀医科大学 |
Principal Investigator |
篠田 謙一 佐賀医科大学, 医学部, 助教授 (30131923)
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Keywords | 縄文人 / 弥生人 / ミトコンドリアDNA / D-loop領域 |
Research Abstract |
本年度は古人骨から得られた塩基配列を遺伝子データベースに登録されているアジア及び環太平洋地域の人々のデータと比較し、縄文人・弥生人と共通の塩基配列を持つ人々が、どのような地域に見られるのかを明らかにした。縄文人では54個体の塩基配列を決定し、21のハプロタイプを区別し、一方弥生人では41個体で配列を決定し、16のハプロタイプを区別している。今回解析した縄文人に見られるハプロタイプの中で、ある程度一定の地域に限定されて出現するハプロタイプは11種類あった。この中で東南アジアや中国南部の人とのみ共通のものが2タイプ存在した。しかし、大多数は東南アジア・環太平洋地域とは共通ではなく、特に環太平洋地域集団に特有のタイプを見いだすことはできず、縄文人とこれらの地域の人々との強い近縁性は認められなかった。これに対し、東北アジアの現代人集団は比較データが多くないために一致するハプロタイプはほとんどないが、縄文遺跡で最大多数を占めるハプロタイプは、モンゴルにのみ出現するタイプと一致しており、北東アジアとの近縁性を示唆した。近世アイヌを含むアイヌとの共通のハプロタイプは2例、琉球と共通のものは3例、現代日本と共通のものは4例出現し、縄文人と琉球・アイヌの人々との近縁性を裏付けるものとなった。その一方で、縄文人が最も多くのハプロタイプを共有したのは朝鮮半島の集団(5例)であった。典型的な渡来系弥生人集団では、33個体から12のハプロタイプを区別した。3例は他に見られないユニークなものだったが、2例は現代日本と朝鮮半島のみと共通、3例は、どちらかというと南方的な要素と考えられる台湾の原住民および中国人、更にタイの人と同じハプロタイプで、残り4例はアジア・環太平洋地域に広く分布するハプロタイプだった。アイヌ・琉球とのみ共通するハプロタイプは存在しなかった。
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Research Products
(1 results)