Research Abstract |
本年度は,昨年度の結果を受けて,燃焼器に透明な側壁を設け,高エンタルピー衝撃波管を用いた超音速燃焼試験を行った.燃焼試験を行うに先立ち,より高エンタルピーな流れを得るために高圧室の改良を行い,最高圧力5MPaまで設定できるようにした.つぎに,配管系を整備し,可燃性ガスを燃焼器内に噴射できるようにした.さらに,非燃焼試験が可能のように衝撃波管の被駆動ガス(主流の気体)を任意に選べるようにした.その結果,主流が空気の場合(燃焼試験)と窒素の場合(非燃焼試験)について比較できるようになった. 試験条件は,高度約30kmをマッハ7で飛行する状態を模擬した.テストセクション内にはスクラムジェットエンジンモデル(2次元インテーク,燃焼器,ノズルを含む)を設置した.予備実験により,スクラムジェットエンジン燃焼器内はマッハ1.7の超音速流れで,静温1400K以上になることを確認した.これは水素自発着火温度より高い.次に燃焼器内に水素ガスを噴射し燃焼試験を行った.目視によれば燃焼器内で発光が観測された. つぎに,高速度カメラによる観察と燃焼器内壁面の静圧測定を行った.その結果,風洞の作動時間内に燃焼器内に紫外波長領域の発光が認められた.そのとき,壁面の静圧は,主流が窒素の場合(非燃焼試験)に比べて上昇した.このことは,超音速流れにおいて,流れに外部から熱が加えれたことを意味している.発光現象と考え合わせると,本実験で用いたスクラムジェットエンジンモデルで燃焼機内では超音速燃焼が実現していると考えることができる. このような高エンタルピー衝撃風洞を用いた超音速燃焼試験は本研究グループが日本では初めて実現した.今後,本装置を用いて,より効率的な超音速混合と燃焼を行うための燃焼器の改良やインテークと燃焼器の整合性が超音速燃焼にいかに影響を与えるか,等について解明する予定である.したっがて,本研究がさらに進めば,スクラムジェットエンジン開発の基礎資料を得ることができ,その開発に寄与できる.本研究に関連した成果は,研究発表の欄に示すように,日本航空宇宙学会,アメリカ航空宇宙学学会等で発表し,高い評価を受けている. さらに,本装置をバリスティックレンジに改良して,極超音速飛行体まわりに誘起される燃焼現象の解明も行った.その結果,斜めデトネーション波が飛行体まわりに定常に維持できる条件を明らかにした.このことは斜めデトネーションで保炎するスクラムジェットエンジン開発に希望をもたらし,スクラムジェットエンジンの作動マッハ数を高くすることができる可能性を示した.
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