2002 Fiscal Year Annual Research Report
水田の環境保全と水稲の超多収を実現させるための戦略
Project/Area Number |
11660015
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鯨 幸夫 金沢大学, 教育学部, 教授 (20126577)
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Keywords | 環境保全 / 水田 / コシヒカリ / 多収 / 根系 / 有機農業 / 無農薬栽培 / 低コスト |
Research Abstract |
水稲栽培における多収の実現は、昨今の食味重視主義の状況下において忘れられているような感がある。しかし、世界人口の増加に伴う穀物増産の必要性と農地の環境保全への対処は世界的な問題である。本年度の結果の概要は以下の通りである。1)再生紙マルチを用いて水稲を有機栽培した場合の生産性と根系生育を検討した。イモチ病耐性遺伝子を導入したコシヒカリBLを用い、富山県農業技術センターにて実施した。堆肥と有機肥料を施用した栽培区の収量は575kg/10aを示した。根系生育および根の生理活性は超多収を示した長野県伊那市で栽培したコシヒカリに近似していたことから、有機資材を用いて多収を実現することの可能性が示唆された。なお、畦畔にはアジュカ、イワダレソウを埴栽した。2)植物資材を利用した水稲栽培での除草効果を検討し、除草剤を使用しない栽培体系の可能性を検討した。マメ科植物のレンゲおよびハマエンドウの散布によりコナギとマツバイの発生が抑制される効果が確認された。しかし、作業コストと資材の調達を考えた場合、米糠の利用が現実的であると判断した。3)富山県農業技術センター内の三要素継続試験区で栽培されたコシヒカリの収量および根系生育を調査した。無P区および無K区の収量と三要素区の収量との間に有意な差は認められず、根重の土壌中階層分布および根の生理活性にも大きな差は認められなかった。よって、これまで慣行的に行われていたN, P, Kの同時施肥方法は再検討すべきであると考えられた。施肥管理体系を改善することにより、環境負荷が少ないかつ経営コストを削減した水稲栽培が可能と考えられる。4)伊那市の超多収コシヒカリの収量は800kg/10a以上の実績を示していた。ポット苗を用い、根の活性を高く維持する栽培技術は超多収へのモデルになると考えられた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 鯨 幸夫, 三木 須, 橋本和幸, 東英夫, 山田信明: "水稲三要素試験区における20年目の生育と根系生育"日本作物学会紀事. 72(別2). (2003)
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[Publications] 鯨 幸夫, 野坂有希, 他: "再生紙マルチを用いて有機栽培したコシヒカリBLの根系生育と及び根の生理活性"日本作物学会紀事. 72(別2). (2003)
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[Publications] 鯨 幸夫, 今村理恵: "コシヒカリの8葉期中干しが根系生育に及ぼす影響"日本作物学会紀事. 72(別2). (2003)
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[Publications] 鯨 幸夫, 登内良太, 梅本英之, 三木 須: "家畜糞の堆肥化とその評価に関する考察"日本作物学会紀事. 72(別2). (2003)
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[Publications] 橋本和幸, 鯨 幸夫: "水稲出液中に含まれるサイトカイニン(e-ZR)含有量と根の生理的活性との関係"日本作物学会紀事. 72(別2). (2003)
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[Publications] 鯨 幸夫, 小村由希: "植物資材を用いた水稲のWeedコントロール"北陸作物学会報. 39(別). (2003)