1999 Fiscal Year Annual Research Report
樹木の耐塩性に及ぼす根系のバイパスフローに関する研究
Project/Area Number |
11660153
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
矢幡 久 九州大学, 熱帯農学研究センター, 教授 (90038290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 善親 九州大学, 農学部, 教授 (90087594)
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Keywords | 耐塩性 / NaCl / バイパスフロー / カスパリー線 / 樹木 / 蛍光物質 / ピラニン |
Research Abstract |
これまでの研究成果から塩の吸収移動、ひいては耐塩性に大きな影響をもつと考えられる根系におけるバイパスフローについて検討した。水やイオンは、細胞内を通過するシンプラスト経由と細胞外を通過するアポプラスト経由によって根系内部の通水組織に到達する。アポプラスト経由で侵入したイオンも内皮や下表皮の細胞壁にある疎水性のカスパリー線によって阻止され細胞内を通過する。このとき細胞膜のイオン選択性によって有害イオンは阻止される。しかし、カスパリー線が一部欠如した樹種では、これがバイパスフローとなって有害イオンが蒸散流によって吸収され、耐塩性の低下を引き起こすと推測される。この仮説を検証する目的で、次の2つの実験を行った。 1)耐塩性の異なる2樹種について、高分子の蛍光物質ピラニンをNaClと同時に吸収させ、ピラニンの吸収量(バイパスフローの大きさの指標)と同時にNaCl吸収量との関係を明らかにした。塩水処理時はポットを同種の穴無しポットで包み、これに0、25、100mMのNaClで処理し、塩処理の25、100mM区にはピラニン0.1g/L(約0.2mM)を加え、48時間の礫栽培した。なお、苗木の蒸散条件を変えるために、常態と暗黒の2組に分けて水耕を行った。水の吸収・蒸散量は、重量法から測定した。塩水処理は24時間で、通常の水耕にもどして根系表面のピラニンを洗浄した。苗木の葉、幹、根の重さ(乾重と湿重)を求め、蒸留水90℃,2時間イオンおよびピラニンを抽出した。Naイオン含有量は、現有の原子吸光光度計で分析し,ピラニンはPAM蛍光分光計で測定した。以上の手順によって、蒸散量とピラニンおよびNaの吸収量との相互の関係を解析した結果、ピラニン量によって表されるバイパスフロー量の大きさとNaの吸収量との関係は、高い相関関係を示し、Naの吸収は、バイパスフローの大きさによって支配されていることが示唆された。 2)セルロースを染色する蛍光物質CBSを利用して根系のカスパリー線およびバイパスフローの存在を蛍光顕微鏡観察で確認した。
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