廃用性萎縮筋におけるミトコンドリア遺伝子の発現異常とその栄養学的改善法

1999 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11670071
• Research Institution: The University of Tokushima
• Principal Investigator: 岸 恭一 徳島大学, 医学部, 教授 (80035435)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 手嶋 茂忠 徳島大学, 医学部, 助手 (40304513) ; 二川 健 徳島大学, 医学部, 助手 (20263824) ; 六反 一仁 徳島大学, 医学部, 助教授 (10230898)
• Keywords: 廃用性筋萎縮 / カテプシン / カルパイン / プロテアソーム / システイン添加 / ミトコンドリア遺伝子

Research Abstract

申請者らは、宇宙開発事業団と共同で無重力による筋萎縮に対して有効な食事(宇宙食)の研究をすすめる中で、食事中の含硫アミノ酸(システイン、メチオニン)が無重力による筋蛋白質の分解の亢進を抑制できることを見出した。さらに、無重力により萎縮した筋細胞では、プロテアーゼとミトコンドリア遺伝子(NADH dehydrogenase,16S ribosome RNA)の発現にも異常があることがわかった。含硫アミノ酸のSH基は、ラジカルスカベンジャーとしての作用に加え、酸化還元レドックスを介し核内転写因子の活性の調節にも関与する。含硫アミノ酸は、これらの生理作用を介して無重力下でのミトコンドリア遺伝子の発現異常を抑制する効果があるのではないかと考えている。廃用性筋萎縮のモデルラットの筋肉では、萎縮と並行してプロテアーゼの発現が大きく変動した。初期には、カテプシンLとμ-カルパインの発現が、後期にはプロテアソ-ムの発現が有意に増大することがわかった。現在、酸化的修飾を受けた蛋白質を特異的に検出できる抗体をもちいて、廃用性萎縮筋の酸化ストレスの有無を調べている。まだ、予備的な実験ではあるが、萎縮期間が長くなるにつれて酸化された変性蛋白質が増加する傾向をしめした。それゆえ、システインの添加は、筋肉内蛋白質の酸化を抑制し、プロテアーゼによる分解を軽減している可能性がある。今後、より強力な抗酸化剤の投与も試み、プロテアーゼとミトコンドリア遺伝子の発現への影響を検討していく予定である。

Research Products

• [Publications] T.Nikwawa et al.: "Vitamin A prevents the decline of immunoglobulin A and Th2 cytokine levels in small intestinal mucosa of ptrotein-malnourished mice."J.Nutr.. 129. 934-941 (1999)
• [Publications] 二川 健ら: "微小重力による筋萎縮とタンパク質分解酵素"必須アミノ酸研究会誌. 155. 37-59 (1999)
• [Publications] 六反一仁ら: "タンパク質栄養と熱ショック応答"必須アミノ酸研究会誌. 156. 12-19 (1999)
• [Publications] S.Teshima et al.: "Helicobacter pylori lipopolysaccharide enhances the expression of NADPH oxidase components in cultured guinea pig gastric mucosal cells."FEBS Lett.. 452. 243-246 (1999)
• [Publications] 二川 健ら: "小児外科:代謝・免疫器官としての腸管"東京医学社. 232 (2000)