1999 Fiscal Year Annual Research Report
肺サーファクタントを指標とした呼吸不全の法医病理学的診断基準の確立
Project/Area Number |
11670425
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
前田 均 大阪市立大学, 医学部, 教授 (20135049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朱 宝利 大阪市立大学, 医学部, 助手 (30305619)
藤田 眞幸 大阪市立大学, 医学部, 講師 (00211524)
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Keywords | 肺サーファクタント関連アポタンパクA / 死因 / 生存時間 / 肺傷害 / 窒息 / 中毒 / 熱傷 / 肺硝子膜症 |
Research Abstract |
肺サーファクタントを指標とした呼吸不全の法医病理学的診断基準を確立するため、剖検資料を用いて病理組織学的・生化学的に検討し、以下のような知見が得られた。 (1)免疫組織化学的分布: 剖検例の肺組織について、抗ヒト・肺サーファクタント関連アポタンパクAモノクロナール抗体を用いて免疫染色を行なった。その結果、(1)縊頸、絞頸や扼頸などの急性窒息死においては、肺胞内に顆粒状染色所見が顕著にみられることが多く、(2)末梢性呼吸障害を起こす薬毒物(筋弛緩剤、有機リン剤、液化石油ガスなど)の急性中毒死や(3)外傷後の呼吸障害が遷延した場合にも同様の所見がみられること、(4)溺死、焼死や急性覚せい剤中毒死では膜状染色所見の増加がしばしば特徴的にみられること、(5)中枢神経系を抑制する睡眠剤、精神安定剤、アルコールや一酸化炭素などの中毒ではサーファクタントの増加がみられないこと、(6)肺硝子膜症では病期により特徴的な肺サーファクタント分布がみられること、などが明らかとなった。 (2)性状変化と遺伝子発現: 凍結保存肺組織片からサーファクタントを分離精製して生化学的に分析した結果、肺硝子膜症においては、マンノース結合部位に変化が生じて免疫グロブリンと結合していることが示唆された。また、遺伝子発現動態分析のために組織中RNAの定量的測定法を新たに開発し、窒息死、焼死および急性覚醒剤中毒死で異なった肺サーファクタントの発現因子が作用している可能性を示す結果が得られた。 (3)血中濃度: 血中濃度分析の結果、(1)血中肺サーファクタントは、肺硝子膜症で増加し、溺死、焼死や急性覚せい剤中毒死でもしばしば増加するが、急性窒息死での増加は顕著ではなく、(2)エンドトキシンの増加が溺死や焼死で同時にみられる例があり、(3)CRP濃度とは必ずしも平行しないことなどが明らかとなった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 石田 香,朱 宝利,前田 均: "肺硝子膜症剖検例の肺サーファクタント蛋白質A(SP-A)のゲルろ過分離パターン"日本界面医学会雑誌. 30. 116-117 (1999)
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[Publications] 石田 香,朱 宝利,前田 均: "急性呼吸促迫症候群(ARDS)における肺サーファクタント関連蛋白質Aの異常"法医病理. 6(印刷中). (2000)
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[Publications] K. Isida, B.-L. Zhu, L. Quan, M.Q. Fujita, H. Maeda: "Pulmonary sufactant-associated protein A levels in cadaverics sera with reference to the cause of death"Forensic Science International. (In press). (2000)
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[Publications] K. Isida, B.-L. Zhu, H. Maeda: "Novel approach to quantitative reverse transcription PCR assay of mRNA component in autopsy material using the TaqMan fluorogenic detection system:Dynamics of pulmonary surfactant apoprotein A"Forensic Science International. (In press). (2000)
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[Publications] B.L. Zhu, K. Ishida, L. Quan, M.Q. Fujita, H. Maeda: "Immunohistochemistry of pulmonary surfactant apoprotein A in forensic autopsy: reassessment in relation to the causes of death"Forensic Science International. (In press). (2000)
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[Publications] 石田 香,朱 宝利,前田 均: "剖検例におけるヒト肺サーファクタント蛋白質-A(SP-A)の遺伝子発現"日本界面医学会雑誌. 31(印刷中). (2000)